第13話 お嬢様と農業
いよいよミリアの農業デビュー当日を迎えた――が、早速洗礼とも言うべき最初の関門が待ち構えている。
それは……早起き。
農家の朝は早い。
貴族たちが寝息を立てて暢気に寝ている間に動きだし、肉体労働に汗を流している。俺でさえ未だに作業後は体中から軋むような音がするくらいなのだ。
今日が生まれて初めての農作業となるミリアには過酷な一日となるだろう。
「農業はしっかり体を鍛えていてもキツいからなぁ」
「そうですね。筋肉はすべてを解決しますよね」
「ローチさんは少し黙っていてください」
相変わらずジェニーはローチに対して手厳しいな。
あと、今回はローチの他に彼の部下であるデビットとベックも参加。さらには老体であるスミゲルも可能な範囲で手伝うとヤル気十分。まさに総力戦といった感じだ。
さて、肝心のミリアはというと――
「どうです? 変なところはありません?」
「ミリアお嬢様はどんなお召し物でもお似合いになります……」
農作業用のために用意したという動きやすそうな服を身にまとったミリアがノリノリでポーズを取り、専属メイドのリタはベタ褒めを繰り返している。
モチベーションはバッチリのようだな。
「さあ、そろそろ行こうか」
「はいですわ!」
キラッキラの瞳をこちらへ向けて元気よく返事をするミリア。
……ホント、なんでこんないい子が婚約者になったんだろうな。
◇◇◇
いつも以上の大所帯で広大な畑を目指す。
「こんなに気持ちのいい朝は生まれて初めてですわ」
まだ朝霧が立ち込めている時間帯ではあるが、ミリアの瞳には眠気など欠片も感じさせなかった。
それにしても、村のみんなはビックリするだろうな。
ただでさえ昨日の騒動で混乱させてしまった上に、その中心にいたミリアが農作業を手伝うため、俺と一緒に畑にやってきたのだから。
みんなのリアクションを想像しつつ歩いていると、あっという間に目的地へ到着――が、どうにも様子がおかしい。
「あれ? みんな集まってどうしたんだ?」
いつもなら子どもも大人も老人もすでに作業へ取りかかっていて賑やかなのだが、今日はまるで違う雰囲気。
なんというか……どんよりしているっていうか……暗いっていうか――
「ま、まさか!」
とてつもなく嫌な予感がして、気がついたら走りだしていた。
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