第18話 目覚めた魔女を待っていた王子さま
痛みの中でボニータの意識が浮上する。
見たくない現実から目を逸らすには眠りに逃げてしまうのが一番だ。
だが今見ている夢は辛すぎる。
しかし現実も辛すぎる。
まどろみから再び夢の中におりようとしたボニータの耳に、聞き覚えのある声が響いた。
ふわんと上がった意識を逃さぬとでもするような鋭さと、温かく包み込むような優しさを含んだ、声が。
「起きた! ボニータ、目を覚まして。ねぇ、私がわかるかい?」
ボニータは目を開けようどうか、一瞬迷って。
自分の手を包む温もりと、柔らかな声音に抵抗することができずに目を開けた。
最初に映ったのは、お日さま色の髪。
ゆるゆると焦点が合っていく視線の先には――――
「……アーサー?」
彼がいた。
「目が覚めて良かった」
ホッとしたようにアーサーはつぶやいくと後ろを振り返り、慌ただしく動き回る人たちに命令を出している。
ボニータは辺りを見回した。
どうやらここは王城のようだ。
(来賓用の客室?)
随分と豪華な部屋だ。
しかし、辺りに散らばっているのは医療器具やら水の入ったタライやらなので、内装とチグハグだ。
(えーと……私は森の屋敷でお菓子を食べて……それで倒れた、のかな?)
ボニータがなんとなくボーッとしていると、誰かが叫んでいるのが聞こえた。
「空を見ろ! 元に戻ってるぞ」
「結界が戻ったんだ!」
「これでもう安心だな!」
歓喜の声を聞いて、ボニータの頭はシンと冷えた。
(私が倒れて結界が緩んだから、か。だからアーサーが……)
「ボニータ」
アーサーが甘く囁く。
「もう君を放したくない。側にいてほしい」
ボニータには、その声が空々しく思えた。
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