何が何だか、よくわからない

白鷺(楓賢)

本編

世の中には、理解不能なエンタメが存在する。その世界に触れた瞬間、何が良いのかさっぱり分からないのに、なぜか引き込まれてしまう。気がつけば、目の前の映像や物語に釘付けになり、気が付けば最後まで見てしまっている。そして、見終わった後に残るのは、理解の欠片も掴めないままの「何だったんだ?」という疑問だ。


例えば、エッチなイメージDVDの中には、謎めいたシチュエーションが繰り広げられるものがある。美しい映像や魅力的な被写体の中に、突如現れる非現実的な演出。その場面が何を意味しているのか、なぜそれがそこにあるのか、全く理解できない。だが、目を離すことができない。理解不能でありながら、何かを感じさせる、そんな世界がそこにある。


また、ポルノ映画の中には、ただ暗い映像が続くだけのシーンや、全く意味の見出せない演出が存在する。何を伝えたいのか、何を表現しているのか、一切分からない。しかし、その不可解さに引き込まれてしまう自分がいる。その不思議な魅力は、理解を超えたところで成立しているのだろう。


そして、忍者がひたすら登場するだけのドラマもある。ストーリー性も、感情の起伏も、どこか曖昧で、ただ忍者がいるだけの世界。しかし、その無駄に感じられる演出が、いつの間にか脳裏に焼き付き、見続けてしまうのだ。


このような理解不能なエンタメを前にした時、人は「理解できるのか?」という問いを抱くかもしれない。しかし、その問いに答えを出すことは難しい。おそらく、一生理解できないまま、そのエンタメは脳裏に残り続けるのだろう。


結局、理解不能の世界というのは、我々の理解を超えた場所に存在する。それでも引き込まれてしまうのは、その世界に独特の「何か」があるからだろう。それが何なのか、言葉にするのは難しいが、その「何か」に触れた時、我々は一瞬でもその世界に魅了されるのだ。そして、理解できないままでも、その魅力に触れることができたという事実が、何よりも重要なのかもしれない。

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