第17話
彼の指示でシャーリーは拘束されて連れて行かれてしまった。
彼女は最後までディアンヌを睨みつけていた。
ディアンヌの何がシャーリーにこうさせるのか、わからない。
けれどシャーリーの中ではディアンヌを見下す立場にいたい。
上に立たなければ気が済まないのだろうと思った。
ディアンヌに執着しなければ幸せに生きられる道もあっただろう。
ディアンヌがテラスから会場に戻ると、カシス伯爵と伯爵夫人はシャーリーを必死に追いかけているのが見えた。
ピーターにお礼を告げつつも今更になって恐怖が襲ってきてしまう。
シャーリーと二人きりになる選択を後悔していた。
(リュドヴィック様がこうしてすぐに来てくださったから助かったけど……)
リュドヴィックはピーターとディアンヌを包み込むように抱きしめてくれた。
ディアンヌも抱きしめ返すように力を込めた。
パーティーは無事に終わり、ディアンヌもメリトルテ公爵夫人の役割を果たすことができた。
シャーリーはディアンヌへの暴言の数々や殺人未遂。
他の令嬢たちへの嫌がらせも一気に露呈したことで彼女の評価とカシス伯爵家の名誉は地に落ちてしまった。
そのまま修道院に送られて、神に奉仕していくことになったそうだ。
カシス伯爵も、鉱山の宝石を加工する際に安価な偽物とすり替えて売り捌いていたそうだ。
中には王家に献上していたものの中にも偽物を混ぜていたことが判明した。
本物を加工することは手間も時間もかかるため、王都で多くの宝石を売り捌くため、安価なガラスに色をつけていたらしい。
そのことで国中の貴族たちの怒りを買い、王家からも見放されることとなる。
恐らくカシス伯爵は身分を剥奪されて、その領地はメリトルテ公爵家とメリーティー男爵家ともう一つ面している侯爵家で分けられることが決まった。
──パーティーが終わって二週間が経とうとしていた。
ロウナリー国王と王妃の間には第一王子が生まれたことで、ロウナリー王国はお祝いムードに包まれている。
そんな中、ディアンヌはメリーティー男爵領で元気に走り回る三つ子とピーターを見守っていた。
リュドヴィックは忙しい中でも家族のために定期的に休暇をとることにしたそうだ。
少し離れた場所では若い木ではあるが、果実が実っているのが見えた。
リュドヴィックはディアンヌの隣でうとうとと眠たそうにしている。
ディアンヌもリュドヴィックに寄りかかるようにして目を閉じた。
こうして平和な時間を過ごしていると、豪華なパーティーに出席したことが嘘のようだ。
ディアンヌはまだまだ経験が足りず、自分の問題点が浮き彫りになったことでやる気に満ち溢れていた。
メリトルテ公爵夫人としてまだまだ足りないことばかりだけれど、これからもリュドヴィックやピーターと共に過ごしたいと思う。
遠くからピーターが元気よくこちらに手を振っているのが見えた。
ディアンヌが手を振り返していると……。
「ディアンヌ、君に伝えたいことがあるんだ」
「はい」
「君との結婚は互いの利害の一致から始まった。だが、ディアンヌは私に大切なものをたくさん教えてくれた」
「わたしが、ですか?」
リュドヴィックと目が合った瞬間、引き込まれるような不思議な感覚になった。
そして彼はディアンヌが予想もしなかった言葉を口にする。
「君のことを、とても大切にしたいと思っている」
「…………え?」
「ディアンヌは家族の温かさを教えてくれた。もう手放せそうにない」
次の更新予定
2024年9月21日 07:00 毎日 07:00
貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜 やきいもほくほく @yakiimo_hokuhoku
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