第13話

ディアンヌがピーターと共に授業を受けると言うと、彼は部屋へと戻っていく。

講師たちは戸惑っていたが、ディアンヌも話を聞きながら一日を過ごした。


そしてパーティーまでの三カ月の間、レッスンを受けることになったのだが……。



「もう一度」


「はい!」



眼鏡をかけたいかにもという年配の女性、二人がディアンヌの前に威圧感と共にやってくる。

リュドヴィックの言う通り、かなり厳しかった。

それこそ学園のマナー講師とは比べものにならないほどに。



「まだまだですわ」


「もう一度お願いします!」


「これではメリトルテ公爵家の家名を背負うことなどできません」



姿勢矯正に歩き方、立ち方や喋り方。

学園で習ったことなど何も役に立たなかった。

朝から晩まで机に向かって知識を叩き込まれる日もあれば、立ちっぱなしでカーテシーや挨拶のやり方を学んでいた。

食事の時間と休み時間はピーターと思いきり体を動かして遊びながら、なるべく一緒にいるようにしていた。


朝から晩まで勉強にレッスン。

リュドヴィックとはすれ違いで、顔を合わせることはない。

それよりも疲れ過ぎてリュドヴィックのことを気にする間もなく、ベッドに入った瞬間眠ってしまう。


一週間経った頃だろうか。



「ディアンヌもがんばっているからボクもがんばるよ!」



と、ピーターから報告を受けた。

ピーターが前向きに授業を受けてくれるとエヴァから報告を受けた。

一カ月経つと、厳しい講師たちから少しずつ努力を認められるようになる。


(もっとがんばらないと……!)


講師たちからピーターやディアンヌの様子がすべて筒抜けだとは思わずに、ディアンヌは寝る間も惜しんで努力していた。


二カ月するとなんとなくではあるが形になっていく。

しかしまだまだ未熟だと言われていたので、寝る間も惜しんで勉強していた。

いくら時間があっても足りないくらいだった。

何故なら十六年間、ディアンヌはまったくと言っていいほど社交界に出ていないのだから。

ひたすら体に叩き込んでいくことしかできない。


毎日、筋肉痛になりながら過ごしていたディアンヌだったが、朝起きると侍女のララがいつもより機嫌がよさそうにしている。



「おはようございます、ディアンヌ様」


「……おはよう、ララ。今日は何時からだったかしら」


「まだ時間はありますよ!」



ディアンヌは紅茶のカップを持ち上げだ。

首を傾げていると、壁に美しく豪華なドレスが掛かっていることに気づく。

水色の生地はディアンヌが見ても明らかに高級だとわかる。

銀色の刺繍、腰あたりにはフリルがついている。

袖や胸元、スカートの真ん中部分はレースがふんだんに使われている。

煌びやかではあるが上品で素敵なドレスだと思った。



「これって……」


「リュドヴィック様からのプレゼントですよ」


「……!」



どうやらリュドヴィックからパーティーに着ていくドレスがプレゼントされたようだ。

カードには『今度は一緒に選びに行こう』と書かれている。

最近、パーティーの準備に忙しくしており、リュドヴィックと顔を合わせていない。

だけどこうしてディアンヌのためにドレスを用意してくれたことはとても嬉しい。

ディアンヌは美しいドレスを見て感動していた。



「……綺麗」


「絶対、ディアンヌ様に似合います!」



ララは自信満々に言ってはくれているが、ディアンヌの容姿は目立つ方ではない。



「パーティーが楽しみですねっ!」


「そうね! がんばらないと」



最近ではディアンヌの努力する姿を見て公爵邸の中で自然と味方も増えてきた。


(リュドヴィック様に会ったら、ドレスのお礼を言わないと……!)


ディアンヌは明るい気持ちでララと話していたのだった。

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