第11話

ディアンヌは間髪入れずに、その申し出を了承したのだった。

興奮していたディアンヌは期待を込めた表情でリュドヴィックを見ていた。

リュドヴィックはフッと息を漏らすようにして笑う。

リュドヴィックの深い隈は、ピーターと向き合おうとした努力のあとだろうか。



「精一杯がんばります。リュドヴィック様、よろしくお願いしますっ」


「こちらこそよろしく頼む。ディアンヌ」



こうしてディアンヌとリュドヴィックは握手を交わした。

そしてすぐに結婚の手続きをしたのだった。


それから一週間。

リュドヴィックは相変わらず忙しそうで、結婚してから一度も顔を合わせていない。

ディアンヌはピーターと共に時間を過ごしながら、彼の心を癒すために奮闘していた。

ピーターに振り回せながら、ディアンヌは公爵家に馴染んでいく

食が細いピーターのために料理を作り、屋敷て働く人たちに認められいった。

ディアンヌもこうしてピーターと過ごす時間は楽しいと感じる。

何よりピーターは天使のように可愛らしい。眼福である。

リュドヴィックとも、少しずつではあるが距離が近づいて行った。

ある日の夕食の時だった。



「どうして君はそんなにまっすぐなんだ?」

 


リュドヴィックの言葉にディアンヌは反射的に答えた。



「家族なんですから助け合うのは当然ですよ!」


「……」



何も言わないままじっとディアンヌを見るリュドヴィックを見て、自分が言った言葉の意味を考える。

ディアンヌは自分の失態に気づいて慌てて口を開く。



「あっ……契約結婚ですけど、自分のやれることはやりたいというか、助けになりたくて」


「……!」


「わたしも男爵家もリュドヴィック様に助けていただいてますし……」



リュドヴィックのおかげでメリーティー男爵家は着々と立て直していた。

気に障ってしまっただろうかと気にしていると、クツクツと鳴る喉。

笑っているのだと気がついて、ディアンヌが安心していた時だった。



「君のような女性は初めてだ」


「……っ!」


「ありがとう」



髪を掻き上げつつも笑うリュドヴィックの表情に、ディアンヌはキュンとしてしまう。


(リュドヴィック様、圧倒的に顔がいい……!)


アイドルを間近で見ているような高揚感にドキドキする胸を押さえた。



「わたしもリュドヴィック様のお役に立てたら嬉しいです」


「……!」



そう言うと、リュドヴィックはスッと視線を逸らしてしまう。

ディアンヌが笑顔のままで固まっていると、彼の耳がほんのりと色づいているのが見えた。



「今更言うのも変だが……結婚相手が君でよかったと思う」


「え……?」



ディアンヌが驚いているとリュドヴィックから目と視線が絡む。

そのまま彼と見つめあったまま動けないでいた。

透き通るような青い瞳に吸い込まれてしまいそうだ。


(今、リュドヴィック様が……わたしでよかったと言ってくださったの?)


ディアンヌは言葉の意味を理解できるのと同時にディアンヌの頬が赤くなっていく。



「あ、あの……」


「深い……意味はないんだ」


「わ、わかってます!」



ディアンヌは何度も頷いていた。


そんなある日のこと、シャーリーからお茶会に誘われた。

リュドヴィックと結婚したことで動いたのだろう。

もちろん、あれだけのことをされてお茶会にいくはずもない。

三カ月後には大きなパーティーが控えているため、ディアンヌも公爵家のためにがんばろうと思っていた。

ディアンヌはリュドヴィックに講師を用意してもらうように手配してもらうように頼む。

ディアンヌも学園である程度のマナーなどは学んだが、まだまだ公爵夫人としては不十分だろう。

それに『貧乏令嬢』と、言われ続けるのはもうたくさんだ。


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