体質

「…………へぇ」


私の名前はサーディ。

何処にでも居るSランク冒険者よ。

興味深い依頼の前で悩んでいるんだけど、その内容が面白くて思わず笑っちゃうわ。


Fランク[実験補助]

依頼主︰ラーク

報酬︰1000ゼノ、200pt

条件︰魔法使い全般

『自身の体質の実験に付き合ってくれる人を募集します。特に魔法を使える者が欲しいです。』


「自分の体質ねぇ……魔法使いを求めてくる辺り、かなり特殊な依頼ね。良いね、興味が出た」


私のジョブは魔道士だから、条件には合っている。

後は行くべきかどうか、だけど――行くに決まってるわ。

最近は大きな依頼ばっかだから、たまには息抜きに低いランクの依頼をこなしたいと思ってたのよ。


「お、おい、あれって……!!」

「“轟雷”のサーディ?!」


……これ以上、興味ない奴らが群がってくるのは嫌だから、さっさと受けてしまいましょう。


「これ、お願いするわ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「やっぱり、この鶏串旨いな」


俺は草原で人が来ないか待ちながら、鶏串を食べていた。

タレも良いが、塩も良いな。

……旨っ!!


「ラーク、本当に来るのか?」

「さぁね、来なかったら来なかったで別のやり方考えれば良いしね」


俺は鶏肉を頬張って、幸せを享受する。

やっぱり、食事は人を幸せにするな。


「美味しそうなの食べてるわね。私にも一本頂戴?」

「お、来たね」


俺は鶏串を一本渡して、どんな人か確認する。

金髪碧眼美女、それでいて豪快に鶏串を食べている。

食べ物を美味しく食べる人は嫌いじゃないね。


「私の名前はサーディって言うの。貴方について、教えて下さる?」

「俺の名前はラークだ。先に言うが、俺は魔法は全く使えないだろう」

「へぇ、ね。どうして、そう言い切れるのかしら」

「俺の体質は今しがた実験した所、ほぼ魔力を抵抗するんだ。魔力を大量に取り入れたら気絶した」


俺がそう言うと彼女は一瞬驚いた顔をした。

やはり普通じゃないんだな。

自分で言うのも何だが、こんな実験に付き合ってくれる程の物好きだ。

きっと、特殊な体質だと分かってくれたら食い付くだろう。


「普通は大量に取り込んだら吐き気で終わる。魔力を取り込んで気絶する例なんて、私が知る範囲で一度きり。“真理の魔石”を取り込んだ馬鹿ぐらいよ」


真理の魔石?

その言葉だけでもヤバい代物なんだろうな。


「真理の魔石――具体的な内容は伏せるけど、とにかく常人では耐えられない程の魔力を帯びている遺物よ。そんな魔石を取り込んだら、確かに気絶するのは当然だと思っていた。しかし、貴方はそんな物取り込んでないわよね?」

「あぁ」


ファントムが送った魔力がどの程度かは分からないが、無作為に魔力を送る程ファントムはイカれた奴じゃない。

きっと、常人には耐えれる量で送っているはずだ。

だが、俺は気絶した。


「常人より魔力を受け入れるキャパが少ないのかしら?」

「それも考えたが、俺のは魔力の親和性がほぼ無いと言っていたんだ」


俺は魔力のキャパが極端に小さいが故に抵抗率も高いと仮説を立てている。

魔力の受け入れ量が少ないのに、受け入れやすさが常人と同じだと魔力に溢れている異世界に居るだけで確実に体に影響が出てるはずだ。

でも、俺には何とも無いから、この仮説が正しそうなんだよな。


「悪い友人ね……分かったわ。早速実験しましょう」


強くなるにはまず自分の事を知らないといけないとは良く言ったものだ。

自分の性質や行動すら把握できてない奴が、戦いで勝てる訳が無い。

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