魔力

あるゴブリンは朝起きたら、集落がやけに静かな事に気がついた。

普段なら、うるさい同胞が呑気に喋りながら見張りを行っている事だろう。

しかし、そんな声すらしなかった。

ゴブリンは恐る恐る家から出ると、皆がをしていた。


なんだ……皆寝てるだけか。


それはそれとして、集落の見張りが居なくなっては敵に襲撃された時に無防備になるだろう。

ゴブリンは寝ている同胞に声をかけようとする。

……が、突然睡魔が襲った。

既に寝て起きたというのに、睡眠欲が全く取り除けていないのだ。

その違和感と共に自分も眠ってしまった……。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「まぁ、その眠りは睡眠じゃなくてに変わるんだけどな!! はーっはっはっは!!」


【幻覚】で自分の存在を悟られず、【睡眠付与】で眠らせて安全に駆除……楽勝だな!!


(調子に乗ってるけど、完全に俺様頼りだよな?)


うっ、正論が辛い……これでも、毎日筋トレは頑張ってるんだがなぁ……。

でも、やっぱりファントム頼りというのは駄目だよな。

俺もファントムのような技が欲しい!!

でなきゃ、俺の残された良心が切り刻まれそうだ。


「トム、これ終わったら何か技教えてくれよ」

「基礎なら教えてやるよ」


俺は素材を回収して、冒険者ギルドに戻る事にした。

俺が戻るの早すぎたのか受付が少し疑ってたけど、素材を提示したら信じてはくれた。


「……はい、これでEランクに昇格しました」


ギルドカードを見ると、確かにEランクに昇格している。

実力付けた感は全く無いけどね。


そこで、俺達は街から少し離れた草原にやってきた。

ファントムに修行付けて貰うんだ。


「さて、まずお前には“魔法”を教えようと思う」

「魔法?」

「魔法ってのはっていうエネルギーを利用して、あらゆる現象を引き起こす技法だ。例えば、炎や水を出せたり出来る」

「おぉ!!」


聞く感じ凄く便利そうだな。

そうだよ、そういうのが欲しいんだよ!!


「だが、お前の魔力との親和性はほぼ無いに等しい」

「じゃあ、今のままじゃその魔法ってのは使えないのか」


なーんだ、じゃあ意味無いじゃんか。

話を聞いてる感じ魔力を必要とするなら、魔力の親和性ゼロな俺がどうやって魔法使えるようになるんだよ。


「だが、この俺様に任せてくれ。秘策がある」

「あるのか!!」

「お前に魔力を送り続けて物理的に慣れさせる」


なんだ、その荒治療は!!

え、大丈夫?

それで体に異変が起きたりとかしない?


「大丈夫、大丈夫、墓は作っといてやるから」

「え、マジで? マジでやるの? まだ心の準備がばばばばばはばばば――――」


――――――――――――――――


「はっ?! はぁ……はぁ……」

「意外と早かったな。気絶してたの丁度3時間か」

「お前、ふざけるなよ!! 危うく死にかけたっての!!」

「でも、ほら、魔力は少しだけ馴染んでるから……結果的に大成功なんじゃないか?」


……確かに、今までとは違って……こう、エネルギーの流れが感じ取れる気がする。

まるで風が可視化されたような感覚?

うわ、なんか気持ち悪くなってきた。


「あ〜それ魔力酔いだな。魔力のキャパ超えると吐き気するんだよな〜」

「そりゃ魔力流しこまれ続けたらそうなるだろ……おえ」


あ、本当に無理――――


(スーパー嗚咽タイム☆)

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