一章 己を磨けば龍をも穿つ
幻覚
今日も今日とて金稼ぎ。
あれから俺達は依頼をこなし続けた。
薬草採取したり、モンスターを討伐したり……ほぼ雑用みたいなものだけど。
少し手持ちが潤ってきた所で貢献ポイントが貯まったのか、Eランクに上がる為の昇格試験に挑んでみた。
昇格試験の内容は小規模のゴブリン集落の壊滅だな。
好きな方法でゴブリンを追い払ったら試験終了、Eランクの冒険者になれるって事だ。
「ふん、ふふ〜ん」
これが終わったら給料アップ……楽しみ過ぎて鼻歌が漏れ出てしまうな。
ちなみに、この試験は一人でしか行けないらしいからシルクとは別々にするらしい。
「そんなお前に朗報があるぜ。俺様はすこーしだけ力を取り戻した!!」
「ほほう、それなら新しい技が使えたりするのか?」
「勿論、その名も【幻覚】だ」
【幻覚】……名前からして厄介そうだな。
俺もファントムのような技を覚えたいんだがな……まだ斬る事しか分からない。
後でファントムに教えて貰おうかな。
「【幻覚】は相手の五感を操るんだ。試しに、そこの石ころ持ってみろよ」
「石ころ? これで何か……熱っ!!」
俺が石ころを拾おうとした瞬間、手が火傷を負う程の熱を感じた。
咄嗟に石ころを放すが、手には特に火傷の跡とかは無いし、石ころを観察しても何の変哲もない石ころでしかない。
「五感を操るとはこういう事だ。【幻覚】は聴覚、視覚、触覚、嗅覚、味覚を操って感覚を誤認識させる」
「なるほど、こいつは面白い」
例えば、相手が武器を持っていたら、先程のように突然熱くなったと勘違いさせる事でその武器を落とす事が出来る。
他にも聴覚を操って音が出なくなったと錯覚させたり、視覚を操って仲間だと勘違いさせたり……これだけでも、色々と悪い事が思い付くな。
「さて、【幻覚】が手に入った所でさっさと試験クリアしようぜ〜」
「頼もしいな」
これを見てると、本当に仲間で良かったと思うよ。
なんというか、敵に回したら駄目なタイプだ。
ファントムの全盛期を封じ込めた賢者ダルタンは相当な強さだったに違いないな。
「……あれだな」
街のすぐ東に位置する森、その奥地にゴブリンの集落があった。
だが、試験内容にもあった通り非常に小規模だった。
これすらクリア出来ないようでは、話にならないという事なのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます