【回想】テレビ

ある時、母が死んだ。

病死だ。

現代の医療でも治すのが難しい難病を母は患っていた。

だから、いつかはこうなるだろうと俺は子供ながらに分かっていた。

寂しかった。

大好きだった母が居なくなって、残されたのは父と弟と俺だけだった。


そして、父も行方不明になった。

突然消えた。

母が亡くなった苦しみに耐えられなくなったのか、俺達兄弟を置いてどこかへ行ってるしまった。


今、弟を世話出来るのは俺だけ……俺だけなんだ。

弟がどんな世界に行こうと、俺が側に居てやらなくちゃって思ったんだ。


だから、俺は弟を見つけ出さなければならない。


「…………出来た」


俺はガラクタを集めてテレビを作っていた。

部品を組み合わせて、液晶パネルをはめ込んで、苦労して作ったテレビだった。


「よし、付けるぞ」

「わぁ……」


付いた。

テレビが付いた。

弟との共同作品が、今動き出したんだ。

人と物が、映像越しに伝わってくる。


俺はこの一瞬を生涯忘れないだろう。

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