勇者の剣
「その様子だと、当たりって事で良いんだよな?」
俺はファントムをギャフンと言わせる事に成功した。
だが、何故だろうか。
驚愕の他に
(勇者……お前の剣が、何故こんな所に)
「……そんな反応されたら、喜ぶに喜べないんだが」
いつにも増してしんみりするファントムになんて声をかければ良いのかは分からない。
その勇者って奴とどんな関係なのか分からないしな。
だけど、この剣は勇者の遺物……いや、遺産なんだろう。
「トム、これ貰って良いか? ……それとも、ここに残した方が良いか?」
「貰ってやってくれ……きっと、カヤルドもそれを望んでる」
俺は勇者の剣を抜く。
ファントムにここまで言われたら無下には出来ないな。
ちゃんと使ってやろうじゃないか。
「帰るか。もう遺跡の中は掃除しておいたから、依頼は達成してるだろ」
俺は帰るためにシルクを探していると、どこからか
不思議に思って鳴き声の方に向かうと、シルクが黒猫に餌やりをしていた。
「……なんだ? その猫」
「あ、おかえり〜この子はワズって言うの〜」
シルクは黒猫を持ち上げ、肌を擦り合わせている。
ただでさえ金が無いってのに、食費増やす気か?
「そのペットはシルクが世話しろよ?」
「勿論!! 可愛いね〜」
……まぁいいや、俺が金出すわけでも無いし。
シルクが気に入ってるなら、なんとか金のやりくりするでしょ……多分。
「あ、そっちの方でも収穫あったんだね」
「あぁ、なんか地面に刺さってたわ」
嘘は言ってない。
けど、安易に勇者の剣だって言う必要も無いだろう。
「へぇ……触ってみてもいい?」
「ちなみに、逃げ去った場合睡眠薬入りのタツベリーを投げるからな」
「私を何だと思って……」
前科あるからなぁ……シルクよりシルクの手癖の悪さの方が信頼出来る。
でも触らせなかった場合強制的に盗み出されるのも困るから、既に【睡眠付与】してあるタツベリーをもう片手にセットしてから渡した。
「あれっ?」
「……何やってるんだ?」
……渡したと思ったら、剣落としやがった。
せっかくのファントムの大事な物なのに。
シルクが勇者の剣を拾おうとする。
だが、剣自体が拾われる事を抵抗しているのか持つ事さえ出来なかった。
「ど、どうなってるの?!」
「きっと、剣君はシルクの事嫌いなんだな〜」
「……冗談のつもり?」
「俺も分かんねぇよ。今初めて起こったもん」
いや、本当に。
勇者の剣が俺の事好きなのか、それとも本当にシルクの事が嫌いなのか……どちらにせよ、勇者の剣は俺しか持てないっぽいな。
原理は知らん。
「もしかしたら、この俺に特別な力が……!!」
「なによそれ!!」
(…………いや、あり得るかもな)
え?
割と冗談で言ったんだけど。
確かに何で俺が持ててシルクが持てないのかは不明だ。
何かしら条件が無いとこんな現象は起きないだろう。
(お前、親は?)
親?
…………捨てられたから分からねぇや。
多分、捨てられたんだろう。
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