睡眠
「そうと決まれば、まず洞窟を抜けないとな」
俺は霊峰の洞窟と呼ばれる場所に転移してきた形となる。
だから、当然出口は分からない。
その辺を彷徨うしかないのか?
「確か俺様の封印場所が最奥たったはすだから……とりあえず、封印場所とは反対方向進めば良いんしゃねぇか?」
それもそうか。
俺でもファントムを封じ込めるなら、出口とは反対方向の奥地にするもん。
「考え方があのクソ野郎と同じなの腹立つぜ」
「その辺の話も教えてくれよ。勿論、歩きながらな」
俺は自分の夜目と勘だけを頼りに歩き出した。
この洞窟少し薄暗いが、夜間のバイトもやってる俺からしてみれば、むしろ丁度良い。
一応言っておくが、迷わないとは言ってないからな。
「俺様を封じ込めたのは賢者ダルタンだ」
「賢者ねぇ……ますます異世界っぽいな」
「俺様も必死に抵抗したんだがな〜あのクソ野郎の方が一枚上手たったのが悔しいぜ……そのせいで、今じゃ全盛期の一割の力しか出なくなっちまった」
きっと、その賢者ダルタンというやつは正義感が強くて良いやつだったに違いないな。
こんな厄介な奴を洞窟の奥地に封印してのけたんだから、その偉業の裏にはとんでもない苦労があったんだろう。
「ラーク、お前どっちの味方なんだ?」
「勿論トムの味方だ。
「ふん」
あ、拗ねた。
弟程じゃないが、極悪人(仮)のファントムにも可愛い所あるんじゃないか。
からかい甲斐がある。
「おいおい、からかうのは俺様の十八番だってのに」
「中々面白い奴だな」
「それは否定しないが」
そうあれこれ喋りながら洞窟の中を歩いていると、何かしらの足音が近づいている気がした。
大きさや形は……イノシシぐらいか?
「……マジかよ」
俺はあんなに大きな
俺の目の前には、イノシシのサイズをしたネズミが大変不快そうな顔をしながら威嚇してしたのだ。
あの巨大な牙で引き裂かれたら間違いなく死んでしまう。
「ジュウ……」
「…………」
「おやおや、早速ピンチってやつか?」
「軽口言ってる場合か? 手ぶらじゃまず勝ち目無いぞ」
何かしらの武器があれば話は違ってくるが、素手であのネズミを狩るのは難しいぞ。
逃げるにも、後ろには封印場所しか無い。
つまり、行き止まりになっている。
なんとかして、隙を作って通り抜けるか?
「……しょうがないな〜この俺様が大いなる力を貸してやろうしゃないか!!」
「何か出来るのか?」
「こういうのはどうだ? 【睡眠付与】」
ファントムがそう言うと、とこからか俺の両足に半透明な煙が巻き付いた。
「【睡眠付与】は俺様が念じた所に睡眠作用がある煙を纏わせるものだ。その状態で攻撃すれば相手を眠らせるぞ」
つまり、この状態で蹴ると相手が催涙スプレーのガスを喰らった感じになるって事だな。
これなら、あのネズミを無力化させる事も出来そうだ。
「ジュウア!!」
「あっ……ぶな!!」
お互い戦闘する意思を見せた所で、ネズミは巨大な牙で俺を噛みつこうとした。
俺は間一髪でその攻撃を避ける。
「これでも喰らえ!!」
その隙を逃さずに、ネズミに向かって蹴りをかました。
ネズミは大きく仰け反り睨みつけるが、徐々にその目を開ける事が困難になってくる。
そして、いつの間にかネズミはその場で眠っていた。
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