第5話
前世の私は、貴族階級ではなかったけど、超がつくほど、過保護な家庭で育てられた。
小学校に上がった時から、どこへ行くにも、一緒に行くお友達の名前と連絡先をメモさせられ、移動するたびに、一時間ごとに電話させられ、小学校の時の門限は夕方五時で、学校から帰宅してから三十分もない滅茶苦茶なもので、何とも居心地の悪い、窮屈な思いをさせられていた。
「男はみんな狼だから、気をつけるように」と言われて育ち、異性の友達もいなかったのに、年頃になると、早く結婚して、孫の顔を見せるように求められた。
本が好きで、学校の図書館司書に憧れたらしいが、正義感に駆られた高校の教師に、「雑務が多く、不規則な仕事で、そんなにいい仕事ではない」と、会ったこともない先輩の手紙を読まされて、撃沈。
交通事故で呆気なく両親を亡くしたものの、自身も、横断歩道で車にはねられて死亡。
こうして簡単にまとめてみると、何てことない人生だけど、当人は、自分が凡人であることを理解しつつ、少しでもより良い人生を送りたいと願っていた。
ーーそれで、今度は、私に生まれ変わったのか。
庭師がよく手入れし、初夏の花々が咲き誇る庭園で、私はエマにベリーのケーキと紅茶を出して貰って、ティータイムを過ごしていた。
彼女には、自分が偽物のお嬢さんだという自覚があった。
もっとも、周りはそのように捉えていなかったようだけど。
人は自分が見たいものを見て、したい経験をしてるんだから、仕方がない。
私が彼女の人生から得た教訓があるとしたら、
一、歩きスマホはやめること、
最も、そんな便利で魅惑に満ちた道具、この世界にはないけど、
一、荷物が多いときは、タクシーを使うこと、
乗りなれてないと大変なのかもしれないけど、
だった。
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