エピローグ

数年後


「200万人を記念して~ 乾杯!」


 ショッピングモールにあるカフェテリアで、葵とセリナはケーキとコーヒーを前に笑顔を浮かべていた。


 魔王が旅に出て数年。その間もコツコツと動画配信を続けて、気がつくと登録者数が200万人を超えていた。


「まさか、ここまで来れるなんて……」


 葵はケーキを頬張りながらうっとりと目を細める。


「本当に、夢みたいですね」


 2人はケーキを食べながら話を続けた。最近の事、これからしたい事、そして魔王の事を……彼が旅に出てだいぶ時が流れた。魔王は新しく旅チャンネルを作り各地を巡りながらそこで出会った人と交流をしている。


 ある時は、魔物を召喚して村の畑仕事を手伝ったり、またある時はダンジョンから逃げ出した魔物を駆除するなど、彼のおかげで多くの人々が救われた。


 視聴者のそんな魔王の姿に好感を持ち、登録者数は驚異的なスピードで増えていく。気を抜いたら負けてしまいそうだ。


「私たちも頑張らないとね」


「そうですね。頑張りましょう!」


 その後もこれからの配信についてや、企画についてアイデアを出し合い、気がつくと周りのお客さんはもういなかった。ただ1人、カウンター席にいる男を除いて……


「ねえ、セリナちゃん、あそこにいるのって……」


 葵はちらっとカウンター席を見る。セリナもつられるように視線を向けると、思わず二度見をして口元に手を当てた。


「ど、どうしてここに?」


 2人は懐かしさと期待を胸に席を立つと、カウンター席に向かった。


「あの……すみません……」


 男は真剣に分厚い本を読んでいたが、声をかけられて振り返る。その表情は、突然の再会を喜ぶような親しみと驚きで溢れていた。


「おぉ! 久しぶりだな!」


 男は微笑みながら葵とセリナを見比べる。その手には使い古されたガイドブックを持っていた。

 






─完─

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【完結】ダンジョン配信をしていたら、本物の勇者と出会ったので、コラボ配信をしてみた。 風見鳥 @ken130630ken

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