14話
「バルケリオス様、どうして勇者を助けたのですか?」
「うむ……そうだな……」
ランベルトと魔王が話しているのは、古びた安いアパートの一室だった。壁紙はところどころ剥がれ、家具も年季が入っている。
「昔の魔王様は力で世界を支配してきたじゃないですか! 動画配信なんかに頼らなくてもこの世界を征服できます!」
魔王は小さな木製のテーブルに座り、カップのコーヒーを手に取りながら答えた。
「いいかランベルト、この世界を支配するには視聴者の声を無視できない。それに彼らの期待に答えることが我らの力を示す手段でもあるんだ」
ランベルトは納得しない様子で首を振り、真剣な眼差しで魔王と向き合った。
「所詮人間どもは弱い生き物です。恐怖で支配すればよくないですか?」
魔王もしばらく唸ると、真剣な眼差しでランベルトを見返した。
「恐怖で一時的に支配したところで意味がない。影響力こそがこの世界を征服するために必要だと、警官も言っていただろ?」
魔王は言葉を一度切ると、さらに畳み掛けるように語った。
「それに彼らはコメントを通じて多くの人と交流している。彼らを敵に回すと厄介だろ?」
ランベルトはため息をつきながらも、魔王の言葉に耳を傾けていた。
「わかりました。それが今のバルケリオス様のやり方なんですね。では一番有名な動画配信者になれるようにお供します」
ランベルトは納得した様子で頷いていたが、頭の中では別のことを考えていた。
(やり方には不満があるが、結果的に世界征服を出来るのならいい。でもあの勇者が邪魔だ。視聴数を増やすためには使えるが、いずれ脅威となる)
「それでは私から提案ですが、町外れの館で勇者たちとコラボ配信をしませんか?」
「それはいいアイデアだ! 任せてもいいか?」
魔王はランベルトの提案に満足そうに頷くと、彼の肩を叩いて褒め称えた。
「お任せください。視聴者が喜ぶような仕掛けを作っておきます。勇者たちにDMを送っておきます」
ランベルトはいかにも真面目な表情で返事をしたが、その内心は全く異なっていた。忠実な部下としての役割を完璧に演じながら、彼の鋭い目が一瞬だけ危険な光を帯びる。
(さて、事故に見せかけて目障りな勇者たちをどう殺そうか?)
ランベルトの顔には薄っすらと微笑みが浮かんでいた。それは魔王には決して見せられない。陰謀と冷酷さを秘めた笑みだった。
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