第24話 突然の告白
やがて家に着くと、俺はすぐにパソコンを立ち上げ、ヨムカクのページを開いた。
「おおっ! 結構コメントが来てるな」
俺は自作のラブコメ小説『三角関係の果てに』の最終回を今朝公開したのだが、それに対する感想の多さに、思わず心の声が漏れた。
『執筆お疲れ様でした』
『めちゃくちゃ面白かったです』
『竜也が最後の最後までダメ人間だったところが笑えました』
『完結おめでとうございます』
『次作も期待しています』
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(次作を期待してもらってるのは嬉しいんだけど、今のところ何もアイデアが浮かんでないんだよな)
そんなことを思いながら、なおもコメントに目を通していると、通知欄にヨムカクからのお知らせが届いていることに気付いた。
【10月6日、13日、20日、27日の四回にわたり、『アンソロジーを狙え』という短編小説のコンテストを行います。このコンテストの審査は、ショートショートの第一人者であらせられる星野真一さんと我々ヨムカクのスタッフで行い、各回の上位10位までの作品は『ヨムカクユーザーが作り出した究極の短編小説集』というタイトルの本に収録され、来年の三月頃に出版する予定です。
次にコンテストの概要を簡単に説明します。まず10月6日の正午に一回目のテーマを発表し、皆様にはそのテーマに沿ったものを二日後の正午までに公開してもらいます。その後、星野真一さんと我々が審査をして、10月13日の正午に参加者全員の順位と作品名、及び二回目のテーマを発表し、後はその繰り返しとなります。最大で一人四作品が収録させる可能性がありますので、皆様奮ってご参加ください。】
(おおっ! これは面白そうな企画だな。まあ10位以内に入るのは無理だろうけど、参加する価値はあるな)
俺は二週間後に行われるイベントに、心を躍らせていた。
「先生、今日いとこが家に遊びに来るので、先に帰らせてもらってもいいですか?」
部活の最中、突然一条が切り出した。
「ああ。そういうことなら、いいぞ」
「でも、今だとバスの時間が中途半端なんですよね。自転車だったら次のバスに間に合うんですけど」
「じゃあ、自転車で行けばいい。おい、斎藤。お前たしか自転車通学だったよな?」
「そうですけど」
「一条を自転車で送ってやれ」
「えっ! それって、二人乗りしろってことですか?」
「ああ」
「いや、いや。自転車の二人乗りは危険だし、そもそも法律で禁止されてるじゃないですか」
「先輩、そんな固いこと言わずに、乗せてくださいよ。警察に見つからなかったら、何の問題もないんだから」
「そういうことだ。分かったら、早く送ってやれ」
「俺はどうなっても知りませんからね」
結局俺の言い分は通じず、一条を送る羽目になった。
「先輩、ラッキーでしたね」
自転車でバス停に向かっている最中、後ろに乗っている一条が意味ありげに言った。
「何がラッキーなんだ?」
「だって、私のおかげで早く帰ることができたじゃないですか」
「そういうことか。でもまさか、先生があんなこと言うとは思わなかったな」
「そうですね。私もまさか、あんなにうまくいくとは思いませんでした」
「うまくいくとは?」
「私、先生からあの言葉を引き出そうとして、わざとあんな風に言ったんです。ついでに言うと、親戚が家に来るって言ったのも嘘なんですよね」
「はあ? お前、何のためにそんな嘘ついたんだよ」
「先輩と二人きりで話すためです。あっ、その先に公園があるので、そこで止まってください」
俺は一条に言われた通り公園で止まり、そのまま二人でベンチに腰掛けた。
「で、話ってなんだよ?」
「この前の日曜日に、伊藤さんと上原さんと動物園に行ったそうですね」
「えっ! なんでお前が知ってるんだ?」
「あの二人、クラスメイトなんですよ。彼女たち、動物園に行ったこと、凄く自慢してて。と言っても、それは林先輩がいたからなんですけどね」
「まあ、そんなところだろうな。で、それがどうかしたのか?」
「先輩は、あの二人のこと、どう思ってるんですか?」
「どうって?」
「恋愛感情はあるんですか?」
一条が出し抜けに聞いてきた。
「ないよ。そもそも、二人は林のことが好きなんだからさ」
「それを知ってて、なんで動物園に行ったんですか?」
「そんなの、どうでもいいだろ」
「どうでもよくないですよ。先輩は平中先輩のことが好きなんでしょ?」
「えっ! お前、何を根拠にそんなこと……」
「先輩の普段の態度を見ていれば、そんなのすぐに分かりますよ。で、平中先輩のことはどうするつもりですか?」
「別にどうもしないよ」
「告白はしないんですか?」
「するわけないだろ。もしフラれたら、気まずくなるじゃないか」
「じゃあ今後は、伊藤さんと上原さんのどちらかを狙おうと思ってるんですか?」
「まだ決めたわけじゃないけど、そうなる可能性はあるな」
「じゃあ、その中に私を入れてもらってもいいですか?」
一条が真剣な顔で聞いてきた。
「えっ! ……お前、そんな
「冗談なんかじゃありません。私、入部した時から、先輩のこと気になってたんですから」
「…………」
突然の告白に何も返せないでいると、一条はいたずらっぽく笑いながら、「そろそろバスが来る時間なので、バス停まで送ってください」と言ってきた。
「ああ」
俺は辛うじてそう返すと、一条を自転車の荷台に乗せ、バス停に向かって走り出した。
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