#### 第五章: 命の誕生

季節が巡り、夏の終わりが近づく頃、美羽はつ


いに出産の時を迎えた。彼女は村の助産師と共


に出産の準備を整え、蒼牙もまた、彼女を支え


るために全力を尽くしていた。



夜空に満天の星が輝く晩、美羽は陣痛に苦しみ


ながらも、決して怯むことなく、生命をこの世


に送り出すための大仕事に挑んでいた。蒼牙は


彼女のそばで手を握り、優しく声をかけ続け


た。


「大丈夫だ、美羽。僕がずっとここにいる。君


は強い、だからこの子も無事に生まれてくる


よ。」


美羽は息を整えながら蒼牙の手を強く握り返


し、必死に頷いた。彼女は不安もあったが、蒼


牙がそばにいることで心が安らぎ、力を取り戻


していた。



そして、数時間の苦しみの後、ついに赤ちゃん


の泣き声が響いた。


「生まれましたよ!」


助産師が赤ん坊を抱き上げ、二人にその姿を見


せた。



美羽は汗をかきながらも微笑み、蒼牙も感動で


言葉を失った。二人は赤ん坊の小さな体を見つ


め、その命の重みを実感した。


「…この子が、私たちの赤ちゃん…」


美羽は涙を流しながら赤ん坊を抱き、蒼牙もそ


の隣で優しく彼女を見つめた。


「君も、この子も、本当に頑張ったね。ありが


とう、美羽。」


蒼牙は美羽の頬に手を添え、感謝の気持ちを込


めて言葉を紡いだ。



赤ん坊は、美羽と蒼牙の愛の結晶であり、二人


の未来を照らす希望だった。小さな命が新たに


加わったことで、二人の生活はこれからさらに


幸せなものへと変わっていく。


---


数日後、赤ちゃんは健康にすくすくと成長し、


村中の人々も新たな命の誕生を喜んでいた。二


人はその小さな命を慈しみながら、家族として


の日々を始めた。


「この子に名前をつけなければいけないわ


ね。」


美羽は赤ちゃんを抱きながら、蒼牙に微笑ん


だ。


「そうだな。君が考えてくれた名前を、聞かせ


てほしい。」


蒼牙は優しく彼女に答えた。



美羽はしばらく考えた後、赤ん坊を見つめなが


ら言った。


「この子の名前は、『蒼生(あおい)』がいい


わ。蒼の神殿で出会った私たちにとって、大切


な意味を持つ名前だから。」


蒼牙はその名前を聞き、深く頷いた。


「美しい名前だ。僕たちの出会いと、この子の


未来がその名前に込められているんだな。」


こうして、赤ちゃんは「蒼生(あおい)」とい


う名前を授かり、蒼牙と美羽の家族として新た


な生活が始まった。二人は赤ちゃんの成長を楽


しみにしながら、さらに深まる愛と共に、穏や


かで幸せな日々を送っていくのだった。


**完**

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龍神の契り 牡蠣 @pinchmaru

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