#### 第五章: 命の誕生
季節が巡り、夏の終わりが近づく頃、美羽はつ
いに出産の時を迎えた。彼女は村の助産師と共
に出産の準備を整え、蒼牙もまた、彼女を支え
るために全力を尽くしていた。
*
夜空に満天の星が輝く晩、美羽は陣痛に苦しみ
ながらも、決して怯むことなく、生命をこの世
に送り出すための大仕事に挑んでいた。蒼牙は
彼女のそばで手を握り、優しく声をかけ続け
た。
「大丈夫だ、美羽。僕がずっとここにいる。君
は強い、だからこの子も無事に生まれてくる
よ。」
美羽は息を整えながら蒼牙の手を強く握り返
し、必死に頷いた。彼女は不安もあったが、蒼
牙がそばにいることで心が安らぎ、力を取り戻
していた。
*
そして、数時間の苦しみの後、ついに赤ちゃん
の泣き声が響いた。
「生まれましたよ!」
助産師が赤ん坊を抱き上げ、二人にその姿を見
せた。
*
美羽は汗をかきながらも微笑み、蒼牙も感動で
言葉を失った。二人は赤ん坊の小さな体を見つ
め、その命の重みを実感した。
「…この子が、私たちの赤ちゃん…」
美羽は涙を流しながら赤ん坊を抱き、蒼牙もそ
の隣で優しく彼女を見つめた。
「君も、この子も、本当に頑張ったね。ありが
とう、美羽。」
蒼牙は美羽の頬に手を添え、感謝の気持ちを込
めて言葉を紡いだ。
*
赤ん坊は、美羽と蒼牙の愛の結晶であり、二人
の未来を照らす希望だった。小さな命が新たに
加わったことで、二人の生活はこれからさらに
幸せなものへと変わっていく。
---
数日後、赤ちゃんは健康にすくすくと成長し、
村中の人々も新たな命の誕生を喜んでいた。二
人はその小さな命を慈しみながら、家族として
の日々を始めた。
「この子に名前をつけなければいけないわ
ね。」
美羽は赤ちゃんを抱きながら、蒼牙に微笑ん
だ。
「そうだな。君が考えてくれた名前を、聞かせ
てほしい。」
蒼牙は優しく彼女に答えた。
*
美羽はしばらく考えた後、赤ん坊を見つめなが
ら言った。
「この子の名前は、『蒼生(あおい)』がいい
わ。蒼の神殿で出会った私たちにとって、大切
な意味を持つ名前だから。」
蒼牙はその名前を聞き、深く頷いた。
「美しい名前だ。僕たちの出会いと、この子の
未来がその名前に込められているんだな。」
こうして、赤ちゃんは「蒼生(あおい)」とい
う名前を授かり、蒼牙と美羽の家族として新た
な生活が始まった。二人は赤ちゃんの成長を楽
しみにしながら、さらに深まる愛と共に、穏や
かで幸せな日々を送っていくのだった。
**完**
龍神の契り 牡蠣 @pinchmaru
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