### 第五章: 最後の決戦
朧が再び闇の中へと消えた後、蒼牙と美羽はそ
の場に立ち尽くしていた。しかし、朧が消えた
ということは、決して彼が降参したわけではな
いことを二人は理解していた。朧が去り際に残
した言葉が、まだ胸の中でくすぶっていた。
「お前たちがどこまでその愛を守り通せる
か…」
蒼牙は美羽の手を握りしめ、真剣な顔で彼女に
言った。
「朧は、きっとまだ諦めていない。彼は必ず戻
ってくる。そして、僕たちを再び試そうとする
だろう。」
美羽もその覚悟はしていた。
「でも、私たちなら乗り越えられる。今度こ
そ、朧を止めましょう。」
二人は廃墟を後にし、呪いを解くための最後の
手段を見つける決意を固めた。旅の終わりはま
だ見えないが、朧との決戦を迎える時は確実に
近づいていた。
#### 数日後
蒼牙と美羽は、朧との最終決戦に備えるため、
かつて蒼牙が人間であった頃の故郷である「蒼
の神殿」に向かっていた。そこには、かつて朧
と蒼牙が共に修行を積んだ場所があり、彼らの
関係が最初に壊れた場所でもあった。
*
神殿に到着した二人は、荘厳な石造りの建物を
見上げながら、朧が再び現れるのを待ってい
た。そして、その時は思ったより早く訪れた。
突如として空が暗転し、冷たい風が吹き抜け
た。闇の中から姿を現したのは、再び朧だっ
た。
「来たか、蒼牙。そして巫女よ。お前たちの愛
が本物であるならば、今度こそそれを証明して
もらおう。」
朧は手を広げ、強大な闇の力を解き放った。空
が裂けるような轟音と共に、闇の竜巻が二人を
襲いかかる。
「美羽、下がれ!」
蒼牙は人間の姿を保ちながらも、美羽を庇うた
めに前に出た。しかし、朧の力は強力で、龍の
力を使わなければ勝てないことは明白だった。
「蒼牙、もう遠慮しないで!あなたには龍の力
がある。今こそその力を使って、朧を倒し
て!」
美羽は強い意志で叫んだ。
*
蒼牙は美羽の言葉に迷いを捨て、再び自らの龍
の力を解放することを決意した。銀色の鱗が輝
き、彼の体は再び巨大な龍の姿に変わった。蒼
牙は朧に向かって吠え、空にその力を解き放
つ。
「朧、お前との決着をここでつける!」
朧は不敵な笑みを浮かべ、闇の力をさらに強大
なものへと変えた。
「その龍の力で、私に勝てると思うか?」
蒼牙はその言葉に答えるように、口から巨大な
炎を吐き出し、朧に襲いかかる。二つの力が激
突し、地を揺るがすような衝撃が周囲に広がっ
た。
*
しかし、朧の闇の力は蒼牙の炎を押し返し、蒼
牙は再び窮地に立たされた。
「蒼牙…!」
美羽はその場でただ見守ることしかできず、焦燥
感が胸を締め付けた。
*
朧はさらに攻撃を強め、蒼牙を追い詰めようと
していたが、その時、美羽は自分ができること
を見つけた。
「私には…私にしかできないことがあるは
ず…!」
美羽は心を集中させ、巫女としての力を呼び起
こした。彼女は神聖な祈りを捧げ、蒼牙に力を
与えようと決意した。
「龍神の守護よ、この世を照らす光よ、蒼牙に
力を…!」
美羽の祈りと共に、彼女の体から神聖な光が放
たれ、それが蒼牙の体に注ぎ込まれた。
「美羽…!」
蒼牙は驚きながらも、その光を受け取ることで
自分の力がさらに増していくのを感じた。
「もう一度…立ち上がれ、蒼牙!あなたなら勝
てる!」
美羽の祈りが蒼牙に力を与え、彼は再び朧に立
ち向かった。
*
今度は蒼牙の力が勝り、彼の炎が朧の闇を焼き
尽くしていった。朧は苦しげに叫びながら、そ
の力を抑えきれなくなっていった。
「なぜだ…なぜお前がこの力を…!」
蒼牙は朧に向かって静かに言った。
「お前が誤解しているのは、力が全てだと思っ
ていることだ。俺にとって大切なのは、力では
なく、愛だ。美羽との絆がある限り、俺はお前
に負けることはない。」
朧はその言葉に打ちのめされ、ついにその姿が
消え去った。彼の闇の力もまた、完全に消滅し
ていった。
#### 終章: 新たな旅路
朧を倒した後、蒼牙は再び人間の姿に戻り、美
羽と共に静かな神殿の前に立っていた。二人は
互いに見つめ合い、全てが終わったことを実感
した。
「これで、本当に終わったのですね…」
美羽は静かに言った。
蒼牙は優しく微笑み、彼女の手を握った。
「ああ、これで全てが終わった。君のおかげ
で、俺は救われた。」
二人は手を取り合い、新たな未来へと歩み出す
ことを決意した。朧の呪いも、二人の絆を試す
闇も、すべてが過去のものとなった今、彼らに
は無限の可能性が広がっていた。
「これからは、二人で共に歩んでいこう。」
蒼牙の言葉に、美羽は頷き、強く彼の手を握り
返した。
*
こうして、蒼牙と美羽の旅は新たな始まりを迎
えた。彼らの絆はどんな困難にも打ち勝つもの
であり、二人で共に未来を歩んでいくことが約
束された。
**完**
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