### 第五章: 最後の決戦

朧が再び闇の中へと消えた後、蒼牙と美羽はそ


の場に立ち尽くしていた。しかし、朧が消えた


ということは、決して彼が降参したわけではな


いことを二人は理解していた。朧が去り際に残


した言葉が、まだ胸の中でくすぶっていた。


「お前たちがどこまでその愛を守り通せる


か…」


蒼牙は美羽の手を握りしめ、真剣な顔で彼女に


言った。


「朧は、きっとまだ諦めていない。彼は必ず戻


ってくる。そして、僕たちを再び試そうとする


だろう。」


美羽もその覚悟はしていた。


「でも、私たちなら乗り越えられる。今度こ


そ、朧を止めましょう。」


二人は廃墟を後にし、呪いを解くための最後の


手段を見つける決意を固めた。旅の終わりはま


だ見えないが、朧との決戦を迎える時は確実に


近づいていた。


#### 数日後


蒼牙と美羽は、朧との最終決戦に備えるため、


かつて蒼牙が人間であった頃の故郷である「蒼


の神殿」に向かっていた。そこには、かつて朧


と蒼牙が共に修行を積んだ場所があり、彼らの


関係が最初に壊れた場所でもあった。



神殿に到着した二人は、荘厳な石造りの建物を


見上げながら、朧が再び現れるのを待ってい


た。そして、その時は思ったより早く訪れた。


突如として空が暗転し、冷たい風が吹き抜け


た。闇の中から姿を現したのは、再び朧だっ


た。


「来たか、蒼牙。そして巫女よ。お前たちの愛


が本物であるならば、今度こそそれを証明して


もらおう。」


朧は手を広げ、強大な闇の力を解き放った。空


が裂けるような轟音と共に、闇の竜巻が二人を


襲いかかる。


「美羽、下がれ!」


蒼牙は人間の姿を保ちながらも、美羽を庇うた


めに前に出た。しかし、朧の力は強力で、龍の


力を使わなければ勝てないことは明白だった。


「蒼牙、もう遠慮しないで!あなたには龍の力


がある。今こそその力を使って、朧を倒し


て!」


美羽は強い意志で叫んだ。



蒼牙は美羽の言葉に迷いを捨て、再び自らの龍


の力を解放することを決意した。銀色の鱗が輝


き、彼の体は再び巨大な龍の姿に変わった。蒼


牙は朧に向かって吠え、空にその力を解き放


つ。


「朧、お前との決着をここでつける!」


朧は不敵な笑みを浮かべ、闇の力をさらに強大


なものへと変えた。


「その龍の力で、私に勝てると思うか?」


蒼牙はその言葉に答えるように、口から巨大な


炎を吐き出し、朧に襲いかかる。二つの力が激


突し、地を揺るがすような衝撃が周囲に広がっ


た。



しかし、朧の闇の力は蒼牙の炎を押し返し、蒼


牙は再び窮地に立たされた。


「蒼牙…!」


美羽はその場でただ見守ることしかできず、焦燥


感が胸を締め付けた。



朧はさらに攻撃を強め、蒼牙を追い詰めようと


していたが、その時、美羽は自分ができること


を見つけた。


「私には…私にしかできないことがあるは


ず…!」


美羽は心を集中させ、巫女としての力を呼び起


こした。彼女は神聖な祈りを捧げ、蒼牙に力を


与えようと決意した。


「龍神の守護よ、この世を照らす光よ、蒼牙に


力を…!」


美羽の祈りと共に、彼女の体から神聖な光が放


たれ、それが蒼牙の体に注ぎ込まれた。


「美羽…!」


蒼牙は驚きながらも、その光を受け取ることで


自分の力がさらに増していくのを感じた。


「もう一度…立ち上がれ、蒼牙!あなたなら勝


てる!」


美羽の祈りが蒼牙に力を与え、彼は再び朧に立


ち向かった。



今度は蒼牙の力が勝り、彼の炎が朧の闇を焼き


尽くしていった。朧は苦しげに叫びながら、そ


の力を抑えきれなくなっていった。


「なぜだ…なぜお前がこの力を…!」


蒼牙は朧に向かって静かに言った。


「お前が誤解しているのは、力が全てだと思っ


ていることだ。俺にとって大切なのは、力では


なく、愛だ。美羽との絆がある限り、俺はお前


に負けることはない。」


朧はその言葉に打ちのめされ、ついにその姿が


消え去った。彼の闇の力もまた、完全に消滅し


ていった。


#### 終章: 新たな旅路


朧を倒した後、蒼牙は再び人間の姿に戻り、美


羽と共に静かな神殿の前に立っていた。二人は


互いに見つめ合い、全てが終わったことを実感


した。


「これで、本当に終わったのですね…」


美羽は静かに言った。


蒼牙は優しく微笑み、彼女の手を握った。


「ああ、これで全てが終わった。君のおかげ


で、俺は救われた。」


二人は手を取り合い、新たな未来へと歩み出す


ことを決意した。朧の呪いも、二人の絆を試す


闇も、すべてが過去のものとなった今、彼らに


は無限の可能性が広がっていた。


「これからは、二人で共に歩んでいこう。」


蒼牙の言葉に、美羽は頷き、強く彼の手を握り


返した。



こうして、蒼牙と美羽の旅は新たな始まりを迎


えた。彼らの絆はどんな困難にも打ち勝つもの


であり、二人で共に未来を歩んでいくことが約


束された。


**完**

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