第3話

その日は何故か早く目覚めてしまった。2度寝する気にもなれずベランダに出て朝日を浴びていると、茶トラの猫がいて目で追っていた。


「にゃー」


そこには、推しボイスをもった西野すみれさん?が猫じゃらしを持って猫と共にじゃれている姿があった。猫に向かって猫じゃらしを一生懸命に振って遊んでいる姿はとても癒されるし、可愛かった。


「なんだあれ。かわいすぎるだろ。いいぞ、もっとやれ」


あんまりにも可愛いのでガン見していたら、視線を感じたのかバッとこっちを見てどっかに行ってしまった。よほど見られたことが恥ずかしかったのか顔が真っ赤で可愛かった。


(早朝に起きてテンション下がってたけど、いいもん見れてたからむしろよかったくらいだわ。いやー心が潤ったわー)


てかあんな子同僚の言ってたエロゲに居たっけ。なんか黒髪ロングの子を見せつけられたことがない。いや、同僚のタイプじゃなかっただけの可能性はあるけど。自分で言っといてあれだけど、フツメンの俺に何故か美人が言い寄るっていう現象が起こらない。これは西野さんはモブキャラなのか、それともイベントがまだなのか。前者であってほしい。


(…ん?なんで俺こんなに西野さんのこと考えてるんだ?学生じゃあるまいし)


もしかして俺…西野さん好き?声はもちろん好きだけど。今の見ただけで?え?そんなことある?


「え、やば。一回り以上も下の子好きなの…俺」


時計を見るといつも家を出る時間の10分前で、慌てて支度することによって俺はこの感情を一旦忘れることにした。



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「委員会決めるからやりたい委員会に、名前を書いてくれー」


今日のホームルームでは委員会を決めるらしい。担任の適当そうな声から委員会決めはスタートした。


(とっっにかく楽な委員会に入りたい…余ってる図書委員でいいか。なんか行事とかなさそうだし楽そう)


チョークを取ろうとしたら女子と手が重なってしまった。


「あなたも図書委員になるつもり?へー」


あからさまに嫌な顔で上から下まで俺を見られたが、社畜舐めんな。今まで何度その顔を取引先で見たことか。もしやこいつが新たなエロゲキャラか…!?それなら危険を回避すべく他の委員会に入ればいいんだろうけど、他の楽そうな委員会はすでに埋まっていた。ちくしょう、避けられない道か…!


「全部きれいに埋まったみたいみたいだし、今回はすごいな。よくもまぁこんな綺麗にいったなぁ」


担任が喜んでるが、またエロゲのキャラに襲われるかもしれないと思うと今後が不安だ。山下花鈴ね、一応覚えておくか。一応同じ委員会の委員なわけだし。


放課後に、図書委員会の顔合わせという名の打ち合わせがあった。図書委員会といっても活動日数は2ヶ月に1回と、秋の読書週間にキャンペーンをやるくらいで簡単そう、というのが俺の感想だ。


委員会終了後、下駄箱まで一緒にいくことになり気まずい空気が俺と山下さんの間に流れる。山下さんは気まずいって思ってないかもだけど、俺からしたらかなり気まずい。


「あんた鈍臭そうだし、仕事する時あたしの迷惑にならないようにしてよね」


「はぁ…頑張ります」


唐突に悪口を言われたが、気にしたら負けな気がする。ふんっ。って効果音つきそうな感じで言われただけだったし、もしやただのツンデレキャラなのでは。


「ま、まぁ。あんたのためだったらあたしが仕事多くやってもいいけど?」


ほらやっぱりそうだ。山下さんはツンデレ枠か。顔もなんか微妙に赤いし。俺の平凡な青春返せと言い出しそうだった。その瞬間。


「きゃっ」


歩いてる途中、叫び声と共に山下さんが転びそうになり、がっつり胸の辺りを掴んで支えてしまった。


(そうだ!!ここエロゲの世界だった!!!こんな単純なラッキースケベにひっかかるなんて…!)


「だ、大丈夫?」


「あんたなんかに心配される筋合いないわよ!…けどありがと」


最後の方はゴニョゴニョいってたし、顔は真っ赤だし、ツンデレ好きはきっとこういうところに萌えるんだなぁ、なんて頭の片隅で考える。


「それから…あんただったからだけど、あたしの胸触ったことも許したげる。なんか気持ちよかったからこれから触ってもいいんだけど、どう?」


「すみません。お断りします。僕急いでるんで!」


思わず逃げるように帰ってしまったのは仕方ないと思う。胸触ったのは許すって言ってたけど彼女貧乳だったから柔らかくはなかったし、むしろ硬いよりだった。俺の思ってるおっぱいとちがう!誰だこんな世界に転生させたやつ、見とけよ。俺がいかにエロゲキャラから逃げられるかを!!

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