第12話 念願の証明魔法

「……あー、平気かね。フロムオード君」


 ようやく正気に返った私は、立ち上がって教授を問いただした。


「あのドエライ可愛い子ちゃんは何だったんスか」


 彼は口元をモゴモゴと動かして、ばつが悪そうに答えた。


「予測できなかったのだ。まさか魔法を乗っ取られるなどとは……」


「はあ?」


「つまりだ。今しがた君が対面した女は、隣国に住まう本物の雨の精霊なのだよ」


 思わず叫びたくなった。咄嗟に大きく息を吸ってみたものの、それから何を言うべきか分からず、膨らんだ風船から空気が抜けるみたく間抜けにプーッと息を吐き出した。もはや私は教授の横に佇む精霊の形をした水の塊を、遣る瀬ない気持ちで眺めるほかになかった。


 教授が唐突に、あっと声を上げた。


「そんな事よりも、早くそれを確認するべきではないかね?」


 彼が足元を指差す。


 そこには水に濡れた一枚の紙があった。


 もしやと思い、飛び付くように紙を拾い上げると、それは紛れもなく私の証明魔法について記されたものだった。


 嬉しくて心臓の鼓動が早まる。頭がクラクラしてきて、目の焦点が上手く合わない。とてもではないが、今の私にはちゃんと読めそうになかった。


「すみません。代わりに読んでもらって良いですか、メカチャック教授」


 半ば押し付けるように教授へ紙を渡した。


 感極まり今にも泣きだしそうな私の目を見て、彼は呆れつつも愉快そうに笑っていた。


 君の証明魔法の名は、と教授がついに読み上げる。


再演アンコール


 それが私の証明魔法。私だけの魔法。


 どんな代物なのか、と聞かずにはおれなかった。勿論聞いてみた。


 心なしか、待ちぼうけを食らっている生徒たちからも緊張を感じる。万年落ちこぼれのベリタ・フロムオードが、人生で初めて手にする魔法とは何か。誰もが興味を寄せている。私は固唾を呑み、祈るように手を合わせて教授の答えを待つ……。


 しかし、その後に不自然な沈黙があった。勿体付けている感じではない。


 とても嫌な予感がした。


「すまない、フロムオード君。いや吾輩が謝ったところで意味がないのだが、これはやはり君が読んでくれたまえ……」


 普段滅多に下手に出ない教授の謝罪と、妙に優しい口調が不安を煽る。


 私は躊躇いながらも、返された紙を取って読んでみた。


『生命を繋ぎ留める魔法。使用後、この魔法の存在は

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