第2話 冷徹の英雄
私の真横を、制服のあちこちを焦がした男子生徒が吹き飛んでいった。
彼は数名を薙ぎ倒した後に気絶したようである。今日はずっとこのような事の繰り返しだ。
魔物か怪物のしわざか?
いや、そうではない。これは魔法学校の卒業試験だ。
この野蛮にして伝統ある
「――落第」
厳しく言い放たれた言葉が、観戦席に座る人間を片っ端から慄え上がらせた。今しがた目にも留まらぬ早さで火球を打ち出し、育ち盛りの人間の肉体を悠々と弾き飛ばしたのが彼だ。
観衆の視線の先に立つ、紳士的な装いをした幼い少年。
パープルホワイトの髪の隙間から突き出る、銀のカフスで飾られた細長い耳。片眼鏡の奥からは失望の色を湛えた紫色の瞳が冷ややかに覗いている。
「貴様ら、5年もこの学び舎におりながら魔法の本質を未だに勘違いしている」
幼い容姿とはいえ、この場にそういった訳で彼を侮る人はいなかった。
――かつて冒険者ギルドと呼ばれる傭兵組織があった頃。『ヒューマンズ・セッション』と名乗る五人組のパーティーがいた。彼らは結成から間もないうちに国内外で密かに活躍。歴史によれば、周辺諸国が抱える破滅的問題をいくつか解決したと記録されている。
御伽噺の勇者よりも勇者らしく、そして真に勇者を超越した者たち。逸話の中には、
その唯一の生き残り。生ける伝説。
救国の英雄、その一人。
ハイエルフの魔法学者。アンドリュー・メカチャック教授。
卒業試験の合格条件は、彼を倒す事。もしくは、倒し得る攻撃を与える事だ。
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