伝説の血を引く不良娘。過去に飛んでバッドエンド確定の世界を救え。
八柳 心傍
第1話 プロローグ
――雨の中で永遠に閉じこもっていたい。
――この夜がずっと続いたら良いのに。
――人は美しいまま終わるべきだ。
この世は誰かの想像や欲望をテーマに創り出されている。
それが常識で、実際にどこの国も不思議な特徴を持っている。世界は誰かの想いをもとに創作され続ける。では、それを創作しているのは誰か。
原初の精霊。
そう呼ばれる者たちが、世界の最果てにいる。
彼らは
人々はそれを〈
私は彼らに会ってみたい。
会って、この世界はどんな想いから生まれたの? と問いかけてみるつもりだ。
もし、私が再び目を覚ます事があれば。
「アタシの冒険、まだ始まってもないのに……」
地面へ投げ出した私の肢体が他人のものに見える。冬の川に浚われるみたく、体の感じが消えていく。無感覚の中で、私の声だけが頭の中で響いている。
好きだったデニムジャケットが、夕焼け色に染まっている。どっぷりと私の血が流れ出していく。私から私が抜け出ていくのを眺めるのは何だかゾッとする。
けれど、こうした不安感が徐々に薄れていくとやがて多幸感が湧いてくる。「もう楽にさせる準備は出来ている」と世界が諭している。今いる場所が、余計にそう感じさせるのか。
ここは学園の中にある霊廟。殉国、救国の英雄が眠る場所。
天蓋の頂にある窓から陽が降り注いでいる。私にではなく、私がもたれ掛かっている墓石に向かっている。ドーム状の霊廟はテラリウムのように緑の豊かな場所だった。
とても神聖な気持ちになる。今なら、ウンと死んでも良いような気にさせられる。
もうすぐ息絶える私、ベリタ・フロムオードの独白をここで終える。
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