第36話 骨には(略
《ちょっとー私の身体、いじめすぎしゃない?》
どこからともなく聞こえてくる、女神エウシスと名乗った声がそう言うと、
「あ、?! っが、が、いやぁ、ぁぁあがががががーーっっ」
女神サクヤの身体が小刻みに痙攣しだし白目を剥くと、やがて一本釣りされた鰹のようにビクンっビクンっと床をのたうち回り始めた。
サクヤの身体の痙攣に合わせて夥しい量の血が、まるでガンガンに振り振りしたコーラのペットボトルを開けた時のように、女神サクヤの頭と右手右足から部屋中に撒き散らされる。
「ががががががが、やめ、入っ、あぁぁぁぁぁぁあ――――ああぁ、あれ、これ胸の辺りがきっついなぁ……よっ、ほっ、お、入れた入れたぁー! よっとぉ、、女神エウシス、さんじょー! イェ――」
「死にな」
――どんっ!どんっ!どどんっっ!!
ぐちゃ、ぐぢゃっ、ぐぢゃ゛ぁ゛ぁ゛!
女神サクヤののたうち回っていた身体がピタッと止まり、その口から女神エウシスの陽気で耳障りな甲高い声が部屋に響き渡る。
と同時に、そのうるさい声をかき消すように老婆が強く杖を床に突き魔法を発動、サクヤの身体を先程よりも荒々しくそれでいて丁寧に、明確な殺意を持って磨り潰した。
が、
「……んもぅ、相変わらず酷いなぁハナちゃんわぁ! 久しぶりに会った友人にいきなり魔法撃ち込むなんてぇ。あ、もしかして、照れてるのかなぁ? あは、あははは! かぁぁわいぃぃ!」
血で染まった六畳一間の狭い部屋の真ん中で、車に轢かれてぐちゃぐちゃに潰れたぺしゃんこのカエルのようになりながらも、何故か生きている女神エウシスと名乗るモノ。
「友人……? アンタ、どの口でそれを言うかねっ! それに……その名で、呼ぶんじゃないよ」
「あははは! 今はハンナ=ベルウッドって名乗ってるんだっけ? あはは、そのまんまじゃん、全然変わって無くてウケるんてすけどぉ!」
――どごんっ! どご……パキィン
老婆、ハンナ=ベルウッドはぐちゃぐちゃに潰れても当然のようにまだ生きている女神に対して更に追い討ちをかける。
今まで以上に強烈な魔法を一発二発と叩き込……もうとしたが、二発目の魔法が発動しきる前にエウシスと名乗るサクヤの身体から迸る濃密な禍々しい神気によって魔法が阻害され発動しない。
「ちっ、相変わらず面倒臭いっ!」
「あはは、この程度の魔法でどうにかなるわけ無いしぃ、結界もペラ過ぎだしぃ、ていうか相変わらず必死過ぎてウケるんだけど」
――ゴ、ぽぅっ。
サクヤの身体から黒く禍々しい神気が、ごぽごぽと溢れ出しサクヤの身体を包み込む。
「この子の身体こんなにしちゃって、かわいそー」
「ふん、女神なんて放っといても再生するんだ、別にいいだろう? それに、アンタがさっさと出てくればもっと早く終わってたさ」
「ふーん、そう言って、若くて可愛い女神が相手だから妬んで必要以上に痛めつけたんじゃないのー?」
「はっ、それはアンタだろう?
「嫉妬じゃないしー喜びの女神だしー。ていうか知ってたんならここまでしなくてもよくない? いくらすぐ治るからってマジありえないんだけど。頭おかしいんじゃないの?」
「大罪の女神に接触したのにそのくらいで済ませてあげたんだ、感謝してもらいたいね。それに、こうでもしないとアンタ達は表に出てこないじゃないか。今じゃ眷属を作るのも一苦労なんだろう? 今度はどんな手を使ってその子を堕としたんだい? 後学のために聞かせておくれよ」
「……ちっ、誰のせいで私達がこうなったと……。頭のイカれたババァが。お前がいなければもっと簡単に……」
「私より年上のくせして人をババア呼ばわりかい。若作りのくそババアが」
「は? 誰がババァ……」
「ぺちゃくちゃお喋りして時間稼ぎのつもりだろうがね、それはこっちも同じだよ」
「あ? 何言って」
「今だよ、私ごとやりな」
―――――きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃンンン
エウシスとハンナを中心とし、幾重にも折り重なった金色に光り輝く魔法陣が二人の足元に展開。
「は?」
二人がいるアパートの上空、遥か天上にも同じような魔法陣がもう一つ。
「アンタ達の為に作った特別な魔法だよ、受け取っておくれね」
「な、?! このくそばば……」
「ババアはお前だよ」
――――――とん
ぐちゃ
神域の外れ、ボロいアパート。
そこを中心に半径10キロほどの範囲にあるもの全てが、ぐちゃっと潰れた。
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