第31話 骨と畑と鶏と
ハンナ婆さん家に来てから早くも3ヶ月が経った。
もうすっかりこの家での暮らしにも慣れてきて、もはやここは自分の家と言っても過言ではない。
2階に1部屋、物置と化している部屋があったのでハンナ婆さんに許可を取り自分の部屋にしてもらった。
ハンナ婆さんが私に出会い頭に魔法を立て続けにぶっ放している合間を狙って交渉をしたが、快く部屋を貸してくれた。
なんだかんだ言って、婆さんも同居人が一人増えて嬉しいのかもしれない。
今の私の生活はというと、私の人生で一番と言っていいほど穏やかで平和な快適な生活が出来ている。
仕事をしなくていいし煩わしい人間関係に悩まなくていい。
骨の身体は怪我も病気もない健康そのもので、激しく動いたとしても全く疲れない。
骨だから外見も特に気にしなくていい。
生きていく上でのストレスが殆ど無い、素晴らしい暮らしを送っている。
毎日のルーティンとしては、毎日日の出とともにパチっとスッキリ目を覚まし、庭でラジオ体操からの軽くジョギング。
骨なので汗はかかないが熱い温泉露天風呂にゆっくりと浸かり汗を流す。
庭にある畑で採れた新鮮な野菜と少し前から庭で飼い始めた鶏からもらった卵なんかを使った朝食を作って食べる。
コーヒーは相変わらず不味い。
掃除と洗濯をパパっと終わらせた後は庭の畑で土いじり。
ここへ来て1ヶ月と少し経った頃に余りにも暇なので勝手に庭に畑を作ってみた。
ちなみに婆さんにはまだ気付かれてはいない。
庭の真ん中にでーんと作った畑だが、庭を眺める余裕もない婆さんが少し心配になる。
初めて畑で野菜を作ってみたがこれがなかなか面白い。
環境が良いのか、どんな野菜も種を植えてから3日も経たずに収穫できるので驚きだ。
味も地球のものより格段に美味しいし、サイズも心なしか大きい気がする。
自分で作った野菜が思ったより美味しかったので毎朝作るのが妙に面倒臭かったサラダを毎食作るようになってしまった。
元々健康だったがこれでますます健康になってしまう。
そして、鶏は……気付いたら庭先にいたのだ。
異世界2日目に出会った紫色のトサカをしたアイツが。
庭の先の森に生息しているらしい鶏は、私が畑を耕していた頃にひょっこり現れた。
全部で5匹も。
雄鶏が一匹に雌鶏が4匹だ。
雄鶏は以前出会った奴よりもトサカが大きく更に毒々しい濃い紫色をしており、尻尾も太く長くて立派。
そして全体的に身体が一回り大きい。
雌鶏は雄鶏よりもトサカが小さく、太い脚の先に生えている爪も小さいし尻尾も短い。
身体は雄鶏よりも若干丸くぽっちゃりさんだ。
こいつらも以前出会った雄鶏よりも一回り大きいので、前の雄鶏はまだ成長しきっていない若い個体だったのかもしれない。
そんな彼らが隊列を組んで森の奥から雄叫びを上げながらいきなり目の前に現れたのだ。
私、物凄いビックリした。
ビックリしたが、やはり社会人として挨拶はしっかりしなければならない。
どうせまた襲われるんだろうなと思いつつ、いつでも動けるように心構えだけはしながら「おはようございますっ!」と威嚇の意味も込めて元気に大きな声で挨拶してみた。
結果、隊列の真ん中にいた雄鶏が渋いイケオジな感じの声で「……おはよう、いい朝だな」と返してきたのだ。
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