第29話 「怠惰」な骨
ハンナ婆さんの家に連れてこられて、早1ヶ月が経とうとしている。
この1ヶ月の間何があったかと言うと、
私はハンナ婆さんに魔法の才を認められ弟子となり、この1ヶ月の間みっちりと魔法の修行をしていた。
破壊神と呼ばれるハンナ婆さんの仕事を手伝い、その隙間時間にこの骨の身体の使い方の手解きを受けていた。
なんてことはなく。
私は只々毎日食っちゃ寝食っちゃ寝してのんべんだらりと怠惰な日々を過ごしていた。
骨の身体で睡眠を取る必要があるのかは知らないが、寝ようと思えば寝れたので夜は寝るようにしていたし、腹も減らないので食事もしなくてもいいのかもしれないが暇潰しで娯楽として食事をしていた。
何回か睡眠と食事を取ってみて分かったのだが、私は睡眠や食事等の人間的な欲求を満たすと身体が軽くなるし精神的にもスッキリするのが分かった。
やはり骨と言えど中の人は普通の人間なので、人間らしい生活をしたほうが良いのかもしれない。
……性欲も満たしたほうが良いのだろうか。
この身体でどうやって満たすのかは分からないが。
そうやって私が人間らしい立派な生活を送っている間ハンナ婆さんは何をしていたかと言うと、この家の家主なのにほぼほぼ家にいることがなかった。
ハンナ婆さんは朝早くから家を出て、帰って来るのは夜遅くになる。
遅い時は日を跨ぐこともあり、お年を召しているというのにこんなハードな生活をしていて大丈夫か心配になる。
そんなハンナ婆さんがたまたま家にいた時に、魔法について聞いてみたこともあった。
あとトンってやって敵が潰れるのとか凄いカッコいいし私の心の中2がざわついていたので。
が、その時もやはり「今から出かけるのが見て分からないのかい? 私ぁ忙しいんだよ!」と一蹴されて何も教えてもらえなかった。
忙しいらしいハンナ婆さんが一体何の仕事をしているのか気になりら夜遅くに帰ってきたハンナ婆さんを捕まえ聞いてみたところ、「今何時だと思っているんだい! ガキは早く寝るんだよ!」と怒られ気付いたら布団に包まって寝ていた。
何を聞いてもサラリと躱されてしまい、しょうがないのでハンナ婆さんが留守の間にハンナ婆さんの部屋に忍び込んでみた。
あんな魔女らしい私は魔女です!と言わんばかりのカッコをしている婆さんの部屋が無性に気になったのだ。
いざ行かん、と襖を開けて足を一歩踏み入れた瞬間に後ろに気配を感じ、恐る恐る振り返るとそこには青筋を浮かべたハンナ婆さんが立っていた。
ニヤリと笑みを浮かべながら静かにキレていたハンナ婆さんは、「この私の部屋に忍び込むなんて、アンタ割と言い度胸してるね」と言うやいなや私の身体は一瞬でバラバラにされてしまった。
おかげで次にハンナ婆さんが帰ってくるまで2日ほどバラバラな状態で過ごす羽目になった。
その時は何故か身体を元に戻すことも視界を展開することも出来なかったので、しゃーないなぁと私の頭は漬物石として2日間頑張った。
しかし、私もただバラバラにされただけではない。
バラバラされたその時、ハンナ婆さんの部屋にあった机の上の郵便物の宛名に「破壊神ハンナ様へ」と書かれているのを目ざとく発見したので、ハンナ婆さんの仕事は破壊神というのが分かった。
破壊神とは大層物騒な感じがするがあの強さを目の当たりにすると何故かすんなりと納得できた。
というより、よく分からないし下手につつくとまた怒られそうなのでスルーした。
異世界に来て1ヶ月と2日。
未だにまともに人と会話が出来ていないのは何故なんだろうか。
それに、ずっと気になっていることがある。
最初にチラッとハンナ婆さんが言っていたこと。
この骨の身体はハンナ婆さんの大切な人の身体らしい。
どういうことなのか、早いとこその辺の説明をして欲しい。
そんな事を思いながら今日も今日とて私は人の家でだらだらとのんびり過ごしている。
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