第28話 束の間の
カポーン。
ざばぁ。
「、、ふ、うぅ〜〜〜、あ゛あ゛ぁぁ、生き返る〜」
私の話を聞き、しばし考え込んだハンナ婆さんに「アンタ最初から凄く臭いからさっさと風呂に入りな」と言われた私は、ハンナ婆さん宅の庭に湧いている源泉掛け流しの温泉に浸かっている。
「……どうしたもんかね」
頭に絞ったタオルを乗せ、じゃばしゃばと湧き出る温泉に浸かり、これからどうしようかと考える。
「……でも温泉なんて何年ぶりかな。しかも露天風呂なんて、贅沢な」
異世界に来て2日だが、色々とあって精神的に酷く消耗している骨の身体に温泉がじんと沁みる。
「はぁ……」
ざぶん、と温泉に沈み込み頭のてっぺんから爪先まで温泉に浸かる。
温泉の底で揺蕩いながら、この2日で起きたこととハンナ婆さんから教えてもらった自分のこの骨の身体についての少ない情報を整理する。
二日前、気が付くと森にいて自分の身体が骨になっていた。
そのまま森を探索していると緑のアイツ、ゴブ子に出会う。
ゴブ子にお持ち帰りされ楽しいお喋り会をしてたと思ったらでかい鶏が来襲。
誰も悪くない不幸な事故で、鶏の頭がパーンとなり紫色に染まった私の腕をゴブ子がもぐもぐする。
引き続き頭と足をもぐもぐしたゴブ子は突如覚醒した私のゲロをたらふくもらい死亡。
ゴブ子のゲロ死後、ゴブ子の死体から吹き出してきた黒い魔力に襲われ身体中ゴキブリに。
私の頭に募った黒い魔力に作りたての
その激しい戦いの末、精神的に限界だった私は失神し、気が付けば神域と言う真っ白い謎空間にいて自称女神の巨大ゴキブリに身体を弄られていた。
全身が
「……うん、酷いな」
ハンナ婆さんが言うには、「神域の神気を浴びて復元したんだろう」とのことだが、何故この骨は神気を浴びると復元するのかは「うるさいガキだね、私は忙しいんだ、少しは自分で考えな!」と怒って教えてくれなかった。
「……ガキ、か」
私は確か前世は30代だったと思う。
まぁハンナ婆さんから見れば30代はガキと言えるかもしれない。
異世界年齢で言えば2日だし。
何故失神した後に神域に転移してきたかはハンナ婆さんも確実には分からないらしい。
神の誰かが転移させたのかも知れないとは言っていたが。
戦いの最中に
なのであれは私の中でただのゴキブリとして処理した。
ゴキブリなんて突然出てきてすぐに処理されて消えていく命だ、覚えている方がおかしい。
異世界に来て2日。
考えてみると展開が急すぎて正直骨といえど流石に少しだけ困惑している。
ハンナ婆さんは時間が取れたら後で色々と疑問に答えてくれると言っていたが、分からないことだらけでどこから質問すれば良いのやら。
――ざぱぁ
「ふぅ……」
異世界転生について。
この神域について。
ハンナ婆さんについて。
この骨の身体のこともよく分からない。
「分からない尽くしだな……まぁ、しゃーないな」
私の異世界道中はまだ始まったばかりだ、そんな急ぐことはない。
今はやっとまともに話すことの出来る人と会えたことを素直に感謝して、疲れた身体を癒すとしよう。
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