第16話 骨の身体全てが私だ、的な
やはり、脳味噌が存在しないこの骨の身体ではこの状況を打破できるナイスアイデアなんて思いつけないのだろう。
人間だった頃の私なら……と今は亡き己の肉にちょっと骨的ノスタルジック。
まぁ、脳味噌無いんだからいい案思いつかなくてもしゃーないよね!
脳味噌さえあればどうにかなったはずだし。
うん……どうしたもんかね。
ちらり、と片目でゴブ子を眺めてみるが必死にこちらに何かを訴えかけるように板切れを指し続けている。
その合間合間にヨダレを垂らしつつ泣きながら、何かとても辛いことでもあったのかそれとも何かに抗っているのか、時折頭を抱えて嫌々と顔を振ったり、かと思えば舌舐めずりして私を数秒間見つめてきたりと中々に情緒不安定なご様子。
ゴブ子、最初は(側に目を瞑れば)自称JKの年相応の振る舞いをしていたのに、鶏が来てからその様子が一変したのは何故だ?
いや、私が鶏の蹴りを受けてから、か。
洞窟で私と話している時が素なのか、私の骨を食べてカルシウムを摂取しているゴブリンゴブリンしたのが素なのか、どっちなのだろう。
もしかして……全くこれっぽっちもミジンコ程も興味のない絶賛上映中のゴブ子ストーリーにヒントがあったり?
これをちゃんと聞いておけばワンチャン脱出の糸口が掴めていたりしたのだろうか。
くそ、ミスったな……こんなことなら面倒臭がらず話を聞いておけば良かった。
話を聞いてないからどういうつもりかよく分からないし分かりたくもないが、今はゴブ子の気まぐれで生かされているに過ぎない。
何にしてもゴブ子の話が終わればまたパクっとおかわりされてしまうのでタイムリミットは迫っている。
ん、生かされている?
……そもそも私って、なんでまだ生きているのだろう。
骨なのに生きているという表現は正しいのかどうかはさておき。
たぶんだが、私は転生して動く骨、所謂ファンタジーにおけるスケルトンと呼ばれるモノになったわけだ。
スケルトンというのは死んた人間の骨が謎パワーで動きだし生者を襲うとかそんな感じの魔物、モンスターである。
大体の物語で、スケルトンは身体をバラバラにしても復活する。
スケルトンを倒すには身体の何処かにある核を壊すか、もしくは復活出来ないくらい粉々に粉砕する必要がある。
見たところ私に核なんてものは無い。
ということは粉砕骨折したら死ぬということか?
でも元々死んでいる骨がまた死ぬって、なに?
ゴブ子に食べられたら本当に私は死ぬのだろうか。
仮に死ぬというのを意識が無くなる状態だとして、じゃあ私の意識はこの骨のどこにあるのか。
人間と同じなら脳味噌があった頭だと思われるが……今私頭半分無いし。
残ったもう半分の頭にあったりするのか?
先程ゴブ子に頭を掴まれた時は頭蓋骨の内側に指が掛かっていたが、脳味噌的な何かが触られたとかは感じなかった。
ということは、今思考している私は頭の中にはいない、もしくは私は頭では思考していない、と考えられるのではなかろうか。
では、私はこの骨のどこにいるのか。
私のこの魂?的なモノは骨の身体のどこに定着しているのか、私、気になります。
気になったのなら即実行。
片目を閉じ意識を集中させる。
集中してみたが、何も感じません。
それっぽく目を閉じて心を、魂を感じる方向で行ってみたんだけど。
ここは内なる魔力とかなんかそんなん感じる場面じゃないの?
話が違うんだが。
やはり異世界は非情である。
……あれ、目を閉じるってなんだ?
おかしくない?
だって骨、目ないじゃん。
目で見ていない?
目が無いのに見える。
目が無くても見える?
……あ
カチッと何かがハマったような、そんな感覚。
失ったと思われた片方の視界が、戻った。
あとなんか視界がめっちゃ広がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます