第15話 現実は非情である
一言言いたい。
「……長い」
この長さを五十音図の指差しで伝えてくるこいつの情熱はなんなんだろう。
やってるうちに興が乗ってきたのか指差しのスピードが尋常ではない速さになっている。
私は途中から、正確に言えばSPとやらが少ないとかいうあたりで物凄く面倒臭くなり、指し示られた文字を読み上げるのを話に集中したいからとか適当なことを言って止めた。
要所要所でふ~んとかへ〜とか言いながら頷いているだけで内容なんて全然分かっていないが、ゴブ子はそれに気づかずシュバババっと一心不乱に五十音図の板切れの上を縦横無尽に手動かしている。
こいつの物語がどんな展開を迎えているのか全く興味が無いので、その隙にこの状況から脱する手立てを模索している。
まずは状況を整理する。
私は左顔面、右手、右足の膝から下をゴブ子に喰われた。
左腕と右腕、左脚は身体から引っこ抜かれて私の横に立て掛けてある。
頭と体だけの両手両足が無い状態で、地面に横たわっている鶏の死体の横っ腹に寄り掛かっているわけだが、文字通り手も足も出ないという状況に笑える。
問題、この状況で私が助かる方法は?
3択―一つだけ選びなさい。
答え1、ナイスボーンな私は突如反撃のアイデアが閃く。
答え2、他の転生者が助けてくれる。
答え3、助からない。異世界は非情である。
答えは、1だ。
転生してまだ2日目だというのにこんな直ぐに喰われて死にたくはない。
それに異世界に来てまだゴブリンと鶏にしか会っていないのだ、私だってもう少し異世界を満喫したい。
幸いゴブ子の話はまだ終わる気配がない。
何としてもこの状況を脱する素晴らしいアイデアを思いつくのだ!私の脳味噌よ!
……骨だから無いんだけど。
★☆★☆★☆★☆
――30分後。
あかん、思いつかない。
答えは、3
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