第14話 転生したらゴブリンでした〜ユニークスキル『暴食』で私を虐めてたクラスメイトは全員私の糧になる!〜 4

 目が覚めたら、私はゴブリンになっていた。


 さっきよりも視点が低く手足も短くて、なんだか身体を動かすのに違和感がある。

 なにより身体に比べて頭が大きすぎるのか、頭の位置が安定せずにふらふらふらふらと動きバランスを取るのが難しい。


 自分の身体を見下ろすと、着ていた制服は消えており代わりに身に着けているのは汚い腰蓑一つだけ。

 胸やら何やらが丸出しで恥ずかしい。


 何か身体を隠せる物は無いかと辺りを探ってみると、近くに首から大量の血を流した人間がうつ伏せに倒れていた。


 恐る恐る近寄り、私より随分と大きな身体をしているうつ伏せの身体を起こして顔を確認すると、苦悶の表情で死に絶えている山下だった。

 私の手には滴るほどの山下の血がベッタリと。


「ぎゃうっ!?」


 びっくりして大きな声を上げてしまったけど、それより耳に聞こえる自分の声が明らかにおかしい。


「ぎゃ、ぎゃうぎゃぁ……」


 自分では普通に言葉を、日本語を話しているつもりなのに、聞こえるのはぎゃうぎゃうとうるさい動物のような声だった。


 聞き慣れない自分の声に違和感が凄かったけど、ぎゃうぎゃうとしばらく声に出していたらこれはこれで可愛らしく思える。

 ゴブリンの身体では喉の構造的に日本語を話せないのか、と納得して気にならなくなった。


 死んでいる山下の身体を上から下まで探ってみる。

 異世界に転移した山下の容姿は、私がゴブリンになったことで大きく感じていたけど日本にいた頃と変わらず、髪は艶々サラサラで肌はきめ細やかで真っ白、今はこんな顔をしているけどクラスで2番か3番目に可愛い顔立ちをしていたはずだ。


 そんな山下が、死んだ。

 私が、殺しちゃった。


 私は、無事に山下を、殺せたんだ。

 間に合ってよかった。

 ああ……あ、は、……はは、はははは。


「……ぎゃまぁぎぃぎゃ」


 ざまぁみろ。

 ざまぁみろ。

 ざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろごめんなさいざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろざまぁみろ。



 私を裏切った罰だ。

 あんなに一緒だったのに。

 ずっと友達でいようって言ったのに。




 そんなことより、さっきからなんだか美味しそうな匂いがするのは気の所為かな……。


 スンスンと豚の鼻が潰れたような歪な自分の鼻を動かして匂いの元を辿ると、目の前の新鮮なにk……山下の死体から発せられているものだと気付いた。


 山下の白い肌が首から流れている血で染められていて……

 首の傷から見える肉は……

 とても、とても、おいしそう。


 おいしそう……美味しそう?

 ……なんで?

 私は……今、この肉を見て、美味しそうだ、と思った、の?


 身体が、ゴブリンになったせい?

 人間の身体を見て、まるで大好きなステーキを前にした時のように、大きな口からヨダレが次から次に溢れてくる。


「!? ぎゃっ!?」


 自分が自分じゃない感覚に恐怖と戸惑いを感じ、大きな口に手を当て後退る。


 殺したいほど憎かったのは本当だけど、殺したあとも辱めるような、そんなつもりはない。

 そんな事をしたら心までゴブリンになってしまう気がする。

 私は、今は身体はゴブリンだけど、心はまだ、人間のつもりだ!


 だめだ、なんでよだれなんか!

 いいにおい

 とまれ!

 おいしそう

 いやだ!

 たべたい

 、ここにいたら、山したを、大切なともだちを、たべてしまう

 はなれなきゃ


 、ペロ。

 手についた山下の血が、私の口に。


 私の身体に、ゴブリンのからだに、電気が走ったような。



 おいしい。





 いただきます



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