第13話 転生したらゴブリンでした〜ユニークスキル『暴食』で私を虐めてたクラスメイトは全員私の糧となる!〜 3

 気が付くとまた、私は真っ白い空間でうつ伏せに倒れていた。

 あまりのショックで気を失ってしまっていたみたい。


 体を起こし周囲の状況を確認すると、この空間にいる人の数が減っていた。

 今は私の他には数人の生徒と校長や教頭、学年主任といった偉そうな教員が数人いるだけになっていた。


 アバターを作り終えた生徒達から順に異世界に転移していっているらしい。

 クラスの担任や部活の顧問を受け持っている教員達は生徒と一緒に向こうへ転移し現場で指揮を執るらしく、残っている教員達は最後までここに残って生徒達が全員異世界に転移するのを見守るらしい。


 大きなディスプレイの前にいる、未だに蹲ってシクシクと泣いている山下に聞いたらそう言っていた。

 教師連中や正義マンな優等生達、私をいじめていた主犯格のグループの奴らは、異世界に行っても友達同士で殺し合いなんかしないで、協力して日本に帰る方法を探すとかなんとか言っているらしい。


 そいつらは皆、所持SPが4桁はいっているらしい。

 そりゃあ、ハイエルフとか天使とかSPを多く使う種族になれた奴らはいいだろうよ。


 正直私はもうどうでもいい。

 日本に帰れたとしてもまたいじめられるし、直ぐに飛び降りの続きをするだけだ。

 このまま異世界に行ってもSPを全て使ってもゴブリンにしかなれないんだ。

 ゴブリンなんてチュートリアルに出てくる雑魚も雑魚のモンスターになったところで、私よりSPが多いあいつらは種族もスキルも盛りに盛ってることだろうし勝てるわけがない。

 あいつらに殺されるくらいなら向こうに行って直ぐに自分で命を断つ方がいい。


 結局、私にとったら日本で死ぬか異世界で死ぬかの違いでしかない。


 ……あぁ、上げて落とされるのはキツイなぁ。

 下手に希望なんて持ってしまったから余計に苦しくなってしまった。

 デスゲームなんてクソみたいなものに勝手に拉致した神を呪う。



 しばらくぼーっとしていると、ずっと泣いていた山下が私に話しかけてきた。

 今までごめん、と謝罪してきたが今更もうどうでもいい。

 こいつは私の元親友だった。

 私の前にあいつらにいじめられていた前任者で、私を身代わりにしていじめから抜け出した糞だ。


 私がいじめから庇ってやった恩を仇で返し奴らに取り入り、また自分にターゲットが向かないように率先して私をいじめてきやがった。

 こいつにやられたことを思い出すと腸が煮えくり返る思いだ。


 ……こいつだけは……絶対に……。


 私の前で泣きながら蹲って謝罪を繰り返す山下に、もういいよ、怒ってないよ、しょうがなかったんだよ、と優しく声をかける。


 生徒は私と山下だけになっていた。

 残った教員達が私達に転移を促すけど、二人でゆっくり話がしたいと言って教員達を先に行かせることができた。


 真っ白い空間の大きなディスプレイの前に二人並んで座り他愛ない話をする。

 山下はもう許されたと思っているのか泣き止んでおり、笑顔すら見せてアバターどうしようか、などと言っている。


 こいつの所持SPは50。

 私よりも多い。

 私の所持SPを教えたら、一瞬勝ち誇ったような顔をしたのを見逃さなかった。

 私は、こんなクソな奴よりも、SPが少ない。


 


 私は〈種族〉をゴブリンにした。

 ゴブリンより下の〈種族〉は異世界に転移した後ちゃんと自殺できるかわからなかったからだ。

 山下は〈種族〉を人間にしスキルをいくつか取ったみたいだ。


 アバターの設定を終えた私と山下は、立ち上がり二人並んでどちらともなく歩き出す。

 身体が段々と光を帯び始め、転移が始まったことに顔を引き攣らせていると急に山下が私を抱きしめた。


 大丈夫だよ、今度は私が守るから。


 そんな頭のおかしい事を言う山下は、今どんな顔をしているのだろう。

 きっと優越感に浸った気持ち悪い顔をしているに違いない。


 転移の光に包まれながら、ありがとう、と返事をする。

 最後に、ぎゅっと力を込めて私の体を抱きしめた山下の、油断しきっている無防備な白くて綺麗な首筋に、


 私は、力いっぱい噛みついた。







《条件達成》

《実績解除》

《ラストワン賞受賞》

《ユニークスキル:暴食を獲得しました》

《ユニークスキル:トロフィーシステムを獲得しました》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る