第6話 狩人 シュルクの教え

9月も中頃に差し掛かるというのに何でこんな暑いんですかね。作中は夏手前です。10年前くらいの日本の夏手前くらいです。



================================



思い立ったが吉日!と言わんばかりに山賊もどきは立ち上がり、用意をし始めた。



「マナ・ハーブはそのままくれちゃる!お前は家に戻って準備してこい。昼食ったらここ集合だな!」


「拒否権とかは…」


「子供を1人で森に行かせられるか!従っとけ!」



どうやら逃げられないらしい。

しかし言っている事も尤もだし、いずれ来る冒険のためにもサバイバル能力は必要だろう。


棚からぼたもち。一石二鳥。

魔力を高めると共にスキルも磨いて行こう。



================================



一度家に帰った俺はマナ・ハーブと向き合っていた。

昼までまだ時間もあるし摂取の仕方を考えよう。


というのも一回そのまま生でかじってみた。

結果は卓上のマナ・ハーブに小さな歯形が付いているものが混じっている事から察すれると思う。



めちゃくちゃ苦いのだ。

生で飲み込む事など考えられないほどに。

前世でいうところのセンブリ茶を軽く越えるだろう。まぁ飲んだ事はないのだが。動画媒体から得られるイメージってのは大事である。


良薬口に苦し。とは言うが鑑定のおかげで目に見えて効果がある。と裏取りが取れているだけ、前世にあった効能とか書かれてるよく分からんもんを摂るよりマシな気がする。



さておき苦くてとても食べられたもんじゃない。


とりあえず葉っぱを取り込む上ですぐに思いつくのは煎じて飲む。だろう。


選択肢として

①そのまま煮込む。

②乾燥させて煮込む。


の二択か?

考えれば他にもあるかもしれないが行動あるのみ。一枚刻んで鍋で煮る。


みるみる水の色が茶色みがかった緑になる。

ほうじ茶と緑茶を1:1で混ぜたらこんな色なんだろうな。


火から下ろし冷ましつつ、そのまま飲むのは怖いので鑑定。


《マナ・ハーブの煮汁》

品質 劣化

マナ・ハーブをそのまま煮た出汁。

非常に苦い。

服用時に使用者のMPを最大値の30%消費する。


おや?ボーナス効果がない。これではただMPを消費して苦いお茶を飲むだけになってしまう。


品質も悪くなっているし煮ると効果が劣化してしまうのだろうか?そもそもこのマナ・ハーブの品質が悪いからか?


《マナ・ハーブ》

品質 普通

乾燥させる事で抗菌効果を期待できる。

服用時に使用者のMPを最大値の50%消費する。


…乾燥させる事で効果を得られるのかもしれない。薄い線だけど時点でウサギを包んだら…?



色々やってるうちに母ルーナがお昼の用意をし始めたので実験はここまでにする。

とりあえず乾燥させておこう。



================================



母お手製の昼食を済ませ、父に山賊養成所で狩りのあれこれを教えてもらうことを伝え、家を出る。



「逃げずに来たな!」


ガハハハと豪快に笑いながら背を叩く山賊親分。

とても痛い。この人STRいくつあるんだよ。


【シュルク】

種族 ヒューマン Lv.?

ジョブ ハンター

HP ???

MP ??

STR ??

VIT ??

DEX ??

INT ??

MND ??

AGI ???

LUC ??


異能

????? 狩猟術 Lv.? 闇魔法 ?????



おっと?読めないところは父レイと変わらず多いが少し分かるところがあるな。


まずはジョブ、ハンター。

そのまま狩人だろう。事前に分かっている事は鑑定しやすいのだろうか?その辺も要検証である。


続いて狩猟術とあるがそのままの意味だろう。

問題は次、闇魔法である。



この人魔法使えたのかよ。

明らか力こそパワー!脳が筋肉でできていると本気で思っていた。魔法を使えるほどには考えられるらしい。



「よし、それじゃあまずは森に行くぞ!物は試し!見て読み取れ!」



前言撤回。脳は筋肉でできていた。



「ちょ、ちょっと待ってよ!危険な目に遭わないための最低限の知識とか訓えみたいなのはないの!?」


「んなもん弟子なんてとった事ないからわからん!思い出したら言葉にするわぃ!」



んな無茶苦茶な。

かくして俺は山賊師匠に猫のように首根っこを掴まれ、修行場所である森へと連行されるのであった。



================================



森です。

超森です。


村の近場にある森の入り口へとやってきていた。

この森は世界では稀な魔物が少ない森らしく、野生生物に気をつけていれば比較的安全らしい。ちなみに何故魔物が少ないのかは分かっていない。


まぁそうでもなければ経験のない子供を連れて狩猟なんざしようとは思わないだろう。



…いや、この山賊ならあり得るかもしれない。

魔物の少ない森でよかった。



「よし、ここからは仕事の時間だ。おふざけはなしでいくぞ。」



雰囲気が変わる。普段のおちゃらけたずんぐりむっくりは捕食者の目を宿した狩人になった。



「狩りってのは五感で読み取るんだ、目に映る情報はもちろん、土の感触や遠くから聞こえる風の音、異臭なんかも全部情報だ。要らないものなんてない。感覚を研ぎ澄ませ。」


「わ、わかった。」



驚いた。ちゃんと教えてくれるのだこの師匠は。

心配していた要素がかき消え、俺は師をこの時初めてちゃんと師と仰ごうと思ったのである。



「すぐ獲物と接敵しようって話じゃない。まずは五感を磨くぞ。」



内容としては森の散策、

この足跡は何日前くらいのものだ、とか。

この木の削れ具合は大型の肉食だ、とか。

この風の音は今夜雨が降るんだろう、だとか。


面倒見いいなぁ。



2時間ほど森の歩き方を学び、最後に1度、実践を見せてもらえることになった。



「ルクス、ここからは気配を悟られてはいかん。闇魔法を使うが構わんな?」


「闇…魔法?」



ここでくるか闇魔法。

とりあえず鑑定で得た知識を出すわけにもいかず、適当にしらを切る。



「闇魔法っつのは多くの魔物が使うと言われていてかつ、魔物にも効きにくい。使う奴があまりおらんがな、使い方によっては狩猟に大きく貢献するんだ。


わしが使える闇魔法の一つ、【シャドウステルス】、試しに使ってみせるからよく見とけ。」



そう言って師匠は魔力を捏ねる。

俺は注意深く動向を伺った。


するとどうだろう、シュルクの身体は影に消えるかのように薄く見えづらくなっていく。


透明というわけではなくのだ。確かにそこにいるはずなのに注視できない。意図的に視線を外されているような感覚だ。


慌てて俺は心眼を起動する。

先程までとは打って変わって、視認できるようになった。



『魔法を初めて鑑定しました。心眼Lv.3を獲得』


なんだって?



================================


作者です。


私情の話ですが、

昨晩追いかけているストリーマーの唐突な配信告知により夜中作品に時間を割けませんでした。


良いエンドだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る