第2話 吾輩は赤さんである。名前はまだ(付けてもらって)ない。
そういえば女神は【転生】って言ってたもんな。
そりゃ0歳児スタートか。
「******* ***…?」
「**** ** *****…」
この人達がなんて言ってるか分かんないし身体も不自由、ないない尽くしだが精神年齢がそのままに転生先に引っ張られていない所は感謝すべきだろう。体面だけは保てたようだ、この歳(?)でギャン泣きは勘弁したい。
「***** *** ** **!」
「**** ** *** ****…」
…思考に夢中でスルーしてたけど目の前の大人2人の頭になんか見える。
《レイ 不安》
《ルーナ 不安》
この人達の名前と精神状況だろうか?
これも心眼の特典なのかな。ここまで異世界言語だったら詰んでたなマジで
しかし赤さんが産まれたら普通泣き叫ばんばかりに喜ぶと思うんだが?なぜ不安なんだ?
まさか俺が気づいてないだけでこの身体悪いのか!?怪我か!?病気か!?
泣き叫ばん…?
あ〜そういう…
訂正しよう。
体面を保つことも俺にはできないらしい。
「おぁぁぁぁぁぁぁぁ!(全力)」
かくして俺は推定家族であろう大人達の笑顔を取り戻すと共に、唯一残された体面すら失うこととなったのであった。
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時は経ち、俺、二歳。
異世界での生活にも慣れ、
言葉も単語ではあるがおおよその意味を理解できるようになっていた。
俺は【ルクス】と名付けられた。自分の手を見たら書いてあった。便利だなぁ心眼くん。
【レイ】、【ルーナ】は俺の両親だった。
レイは柔らかな印象を覚える茶髪のイケメンだ。暴力とか無縁な世界に生きてそう。(偏見)
20代後半くらいだろうか?
ルーナはブロンドの綺麗な髪を下ろしている美人。レイより若く見える為20代前半くらいだろう。めちゃくちゃ美人である。
女神から伝えられた通り、貴族とかの出自ではなく普通の農村、畑とか畜産とかがメインのど田舎の村で農業を生業としている。
作物だけでは栄養が足りるわけもなく、村人同士での物々交換で各々必要なものを揃えている。
金銭もあるにはあるが村の外部からたまに来る商人との交渉に使われるくらいで、村長が一括で管理している。そのくらいど田舎だ。
医者はおらず、回復魔法を使えるという光魔法の使い手を尋ねにいく、もしくは来てもらって治療してもらうらしい。ザ・王道ファンタジーってヤツだな。
この村に限らず、この世界では医療技術が発展しておらず、餓死や流行り病が蔓延しているそうだ。
医療知識があればチート無双でウハウハできていたかもしれないが残念ながら前世はそういった技術とは無縁だった。くやちい。
転生するって分かってたら現代知識をこれでもかと脳に叩き込んだのに。なんて思うのは俺だけではないだろう。電波の届くスマホを転生特典に願っておくべきだったか。
さて。なんで唐突に医療に必要以上にフォーカスを当てているかと言うと俺、絶賛発熱中。
光魔法の使い手待ちで高熱にうなされている。
はよ来てくれ。二歳児の体力だとマジで辛い。
何もできずに終わっちゃうよ?心眼さん使いこなせず異世界転生物語終わっちゃうよ?
待つこと2時間(体感)
部屋に白いローブを着た女性が入ってきた。
見るからにヒーラーなんだろうなぁ。って感じ
「患者の具合は如何ですか?」
「ずっと高熱にうなされていて…食事も喉を通っていないんです…」
「息子は…息子は大丈夫なんでしょうか?」
「見たところ回復魔法で十分戻せる体力と見えます、お待ちください。」
「今から回復魔法をかけるわね、辛い中よく頑張ったわね、もう大丈夫よ」
会話を終えると白ローブの女性は俺に声を掛けながら身体に手をかざし祈り始めた。
控えめな光と共に俺の身体に暖かいものが流れてくる感じがした。魔力、というものだろうか?
少し意識を向けてみる。
感覚的には白ローブの手を中心に身体全体に広がっていくイメージだ。
普通に生活してたら分かりようがないが確かに体内を流れている。
なるほど?これを扱う事で魔法を発現させてるんだろうな。
推定魔力の流れを楽しんでいると白ローブがふと何かに気づいたようにこちらの顔を見てきた。
と同時に魔法の行使が終わる。熱も引きだいぶ気が楽になった。便利やなぁ〜回復魔法
「熱も引いたようですし大丈夫でしょう、栄養を摂らせて寝かせてあげてくださいね。」
「ルクスゥゥゥ… ありがとうございます…!ありがとうございます!!」
「良かったねルクス…今ご飯用意するから少し待っててね、」
ギャン泣きで抱きついてくる父、レイを放置し、瞳に涙を溜めた母、ルーナがご飯を取りに部屋を出る。
放置して行かないでよ拒否する体力無いんだから…
「ふふっ、ちゃんと寝かせてあげてくださいね、?」
「あ、フィーナ司祭失礼致しました…父さんは話をしてくるからルクスはご飯を食べたらしっかり寝るんだぞ?」
優しい笑顔のフィーナ司祭と恥ずかしそうに笑うレイは部屋から去っていった。
「ルクス〜出来たわよ〜」
暫くしてルーナがお粥を持ってきてくれた。
「母さん、ありがとう…」
「無理に喋らなくて良いのよ?しっかり食べてしっかり休んでね」
母の優しさが沁みた。
腹が満たされ、安心すると共に眠気が襲ってくる。
「おやすみ、ルクス」
これが俺と魔力との出会いであった。
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side フィーナ
村での祈りが終わり帰路に着く。
この村では教会もなければ定住した聖職者も光属性魔法師もいない。
症状によっては間に合わない事もある。
特に体力のない子供だと運任せになってしまう。
今回はとても運がいい方だった。
「そういえばあの子、ルクスくんだったかしら」
今日の患者。ルクスくん。
私の回復魔法に反応していたような気がするけど気にしすぎかな、
もしあの歳で魔力の動きに気づけるなら才能どころの話ではない。
「もしかしたら大物になるかも、なんてね」
冗談を口にしながら帰路を進む。
今日救えたあの子が素敵な人生を歩めるよう祈りながら。
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