第3話 まだ見慣れぬ景色の中

「食べないのか?」

「えーっと、あの、これは……」

 レレイアに戸惑いながら返事をするユイが、目の前に用意された見慣れぬ料理の数々に、困ったように右に左にと目を向ける。隣にいるレレイアに目線を向けると、大きく口を開けご飯を頬張っていた。呆気に取られて見ていると、ルイスがユイの様子を見てフフッと笑いながら、大皿に盛られたおかずを取り分けユイに差し出した

「はじめて見るよね。僕も最初レレイアに食べれると聞いた時、無理だって思ったよ」

「ルイスが嫌そうな顔をしてたけど、本当に元いた場所に無いんだな。もったいないな」

 二人の話を聞きながら、分けられたおかずを受け取る。お皿に盛られた見慣れぬ色味をした魚のような何かと目があって思わずグッと息を飲んだ

「無理そうなら残してもいいよ」

 ユイの様子を見て、ルイスが心配そうに声をかける。レレイアはお皿の上のおかずが食べたいのか、ジーッと見ていると、ユイが恐る恐るおかずをちょっとお箸でつまんで食べるとすぐ、レレイアとルイスを交互に見た後、お皿に盛られた魚のような何かをジッと見た

「これ、とても美味しい」

「だろ?元の食材も美味しいけれど、ルイスの味付けが良いからな」

 レレイアがそう言いながらユイが食べたおかずに手を伸ばし、二人一緒に美味しそうに食べながら色々と話はじめた。途中、ユイがレレイアに言われて他の料理も食べると、二人顔を見合わせ笑ってウンウンと頷いた。ユイが美味しそうに食べるのを見てルイスがホット胸を撫で下ろし、ご飯を食べはじめた







「夜の景色は、あの場所と一緒だ」

 夕食後、レレイアと寝ていたはずのユイが家から少し離れた高台に一人、夜風に当たっていた。大きなアクビをして、ボーッと高台から見えるポツポツと明かりが見える街並みを見ていると、ユイの背後から足音が聞こえてきた

「眠れないの?」

 ルイスが微笑みながらユイに声をかけ隣に来た。ちらりとルイスに目線を向け返事の代わりに少し頷く。その後は二人とも特に会話をせず、街の明かりを見た


「魔術はまだ使えない?」

 と、ルイスがユイに問いかける。また返事の代わりに少し頷くと、ルイスが少し困った様子で微笑んだ

「あの……。この世界は魔術が使えないとかですか?」

「いや、ここは君がいた世界と一緒だよ。ただ知らない場所に飛ばされただけで、あの街に出たら魔術師もレレイアみたいな子も沢山いるよ」

「レレイアみたいな子が?」

 ふと、高台に来る前、寝ていたところを寝相が悪いレレイアに背中を蹴られ尻尾で体をくすぐられ目が覚めた事を思いだし苦笑いをした。そんなユイの隣で街並みに目線を向けたままのルイスが険しい顔で、ポツリと呟いた

「ユウとミイは、どこかでまた魔力を奪っているのだろうか」

「えっ……。あれ、私……」

 ルイスの言葉が聞こえたユイが首をかしげていると、二人の近くでガサガサと微かに草木が揺れる音が聞こえたルイスがユイをちらりと見てログハウスのある方を指差した

「これ以上夜遅くなると魔獣が現れる。早く帰って休もうか」

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