第2話 心に一時の安らぎを

 レレイアの後を追いかけ森の中にあるログハウスに着いたユイ。ガチャと躊躇いもなく玄関の扉を開けたレレイアの後ろからちらりとログハウスの中を覗いた

「帰ってきたぞ」

 レレイアが調理中のルイスに声をかけながら、大きなアクビをしながらログハウスの中に入っていく。ユイは入っていいのか分からず玄関先で戸惑っていると、ルイスが微笑みながら手招きをして、ユイを中に誘うと、リビングにある椅子を指差した

「ちょっと、緊張してる?」

「ええ、まあ……」

 家の中を見渡しながらリビングにある椅子に座ったユイに、ルイスがホットミルクを手渡した

「もう少し作るのに時間かかるから」

 そう言うと、グツグツと何かを煮込んでいるような音が聞こえる方に歩いていくルイス。その後ろ姿を見ていると、レレイアが見慣れぬ果実を手に持ち、ルイスに差し出した

「おい。これ入れていいのか?」

「それは前にレレイアが不味いと言っていけど良いのであれば」

「……止めとく」

 味を思いだし険しい顔で元にあった場所に果実を戻すレレイア。他の食材を探すレレイアの姿をルイスがフフっと微笑み見ていると二人の様子を不思議そうに見ているユイに気づいた

「まだ気持ちが落ち着かないなら、ちょっと散歩にでも出る?まだ日も落ちないから散歩は、ちょうど良いかもね」

 そう言うと、キッチンにある窓に目線を向けたルイス。ユイもリビングにある大きな窓に目線を向け、いつの間にか夕暮れになっていた外を見て、ゆっくりと椅子から立ち上がった

「じゃあ、日が暮れる前に少しだけ……」

 小声でそう言うと、ログハウスを出たユイ。バタンと玄関の扉が閉じる音が聞こえると、レレイアがルイスを見た

「もうすぐご飯なのに、散歩なんていいのか?」

「いいよ。一人になって、確認したいことがあるだろうし」

「ああ、そうか。魔力を無くした人が来るのは久しぶりだから忘れてた」

 レレイアが食材を入れている棚を探りながらそう言うと、ルイスが少し哀しげにキッチンの窓から見える外を見た

「あの人は、今日の事は忘れないだろうか」

「ルイスはまだ覚えているのか?」

「忘れた日なんてないよ」

 ポツリ呟いたルイスの言葉に、食材を探していたレレイアの手が止まった。レレイアがこちらを見ていることに気づいたルイスがフフッと笑って、グツグツと聞こえる鍋をかき混ぜた

「でも、自分には魔術を使って生きるより、ここでレレイアと、のんびりした生活が合っているのかもね」

「そうか、ルイスがそう言うなら仕方ないな」

 レレイアがそう言いながら棚から見つけた食材をルイスに手渡した





「こんなの見たことない……」

 一方その頃、散歩中のユイは、ログハウスから出て少し歩いた場所にあった高台に辿り着いていた。高台から見える街並みをしばらく見つめ、ふぅ。と一つ深呼吸をした

「ミイに呼ばれたあの場所は荒れ地だったからな」

 程よいそよ風が吹く中、少し振り向いて高台を見る。そよ風に吹かれユラユラ揺れる草木をボーッと見ていると、ふとレレイアに合う前の出来事を思い出した

「あの時……」

「おい、お前!」

 ユイの言葉を遮るように、レレイアの大声が聞こえてきた

「お前って……。私、ユイって名前なんだけど」

 近寄ってくるレレイアにユイがそう言うと、ジロジロと顔を見た後、ユイの手をつかんでグイッと引っ張った。そよ風だった風が急に強く吹き荒れ、二人の周りを木の葉や花びらがヒラヒラと舞い、レレイアの白い尻尾が引っ張られるユイの腕に触れた

「風が吹いてきたし、ご飯ももうすぐ出来そうだ。色々悩むんなら飯を食べてからにするんだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る