マジカルポラリスガール

シャオえる

第1話 新たな世界の始まりに

「はぁ、つまんないの……」

 ため息つきながら女の子が一人呟く。腰まである長い紙を揺らし、くるりと振り向いたこの先は、枯れた地面に数人ぐったりと倒れていた

「そろそろ、次の世界に行くかな」

 そうまた呟くと、足元に丸く大きな魔方陣が現れ円の周りが眩しい光が放たれた


「ユイ、移動の魔術を使う用意が出来ましたよ」

 突然、耳元に声が聞こえて顔を少し声のした方に横に向けると、銀髪の小さい女の子が右肩に乗っていた

「ありがと、世話になったね。おかげで強くなれたよ」

「こちらこそこの方々を倒していただき、ありがとうございます」

 ユイの前に現れペコリと頭を下げる女の子につられてユイもペコリと頭を下げた

「それじゃあ、私の術と合わせましょう」

 女の子がそう言うと、ユイの頭の上に移動すると魔方陣の上に重ねるように、小さな魔方陣が現れた

「ねえ、せっかく仲良くなれたんだから、一緒に次の世界に行かない?」

「いえ、またすぐに会えると思いますから、またの  機会にします」

「そっか、また会おうね!」

 会話の途中、二人の目線が合いにこりと微笑むユイに使い魔も微笑む。ユイがふぅ。と一つ深呼吸をして、息を整えると呪文を唱えはじめた。ユイの魔方陣の周辺でそよ風が吹きだすと、ユイの真上で浮かんでいた使い魔が魔方陣の外へと移動した。ユイの肩まである髪がユラユラと揺れ、女の子の魔方陣からも光を放たれ、二つの魔方陣から放たれる光のせいでユイの姿が見えなくなった。女の子が不安げに見ていると、眩しかった光が消え、女の子の前にいたはずのユイの姿は消え、二人の魔方陣だけが残っていた





「ミイ、魔方陣は残しているか?」

 女の子の背後から男性の声が聞こえ振り向くと、ユイが倒した人達の間を通り抜け、ミイと呼ぶ銀髪の小さな女の子の方に近づいていてきた

「はい。魔術も魔力も私の中にあります」

 ミイがそう言うと、男性が右手を差し出し、ミイがその手のひらの上に乗ると目を閉じた。すると、ミイの足元にユイの魔方陣が現れ、ミイがユイが呟いていた呪文を唱えはじめる。ミイの様子を見ていた男性も目を閉じ、しばらくミイの呪文が辺りに響いて聞こえる。呪文を唱え終え、二人が閉じていた目を開けると、男性がつまらなそうに、はぁ。とため息をついた

「なんの足しにもならない魔力だな。魔術もありきたりだ。使い魔である君の魔力の足しにもならないな」

「そうですね。残念です」

「前の魔術師の方が良い魔力と剣術を持っていたな」

「ええ、剣術を得たおかけで、ユウ様のちょっとだけ料理が上手くなったのは良い影響です」

 ミイがクスクスと笑いながら、ユウの左肩に移動し座ると、ユウがミイの言葉を聞いて、フフッと笑う

「次の獲物を探しに行くか」

 そう言いながら振り返ったその時、ガシッとなった足音で、ユイが倒した人達の体が消えはじめ、ユウが魔方陣があった場所から後にする頃には、人々の姿は消えてなくなり、枯れていたはずの地面は木々や草が溢れる場所になっていた








「おい、あんた、起きろ」

 その頃、光と共に消えたユイは、バシバシと強めに頬を叩かれていた。騒がしく聞こえる声と頬の痛みで目を開けるのを躊躇していると、今度はユラユラと大きく体を揺さぶられ、仕方なく目をうっすらと開けると、微かに視界に写った人物に驚いて、ガバッと勢いよく体を起こした

「……ここは」

 キョロキョロと辺りを見渡し、目の前にいる人物を見て首をかしげる。ユイを叩き起こした、白い猫のような獣の耳を真っ白な頭につけた少女がユイをジロジロと見ている

「なあお前、魔術とか何か色々使えるか?」

 グイッと顔を近づけた少女。その少女のお尻近くから生える白い尻尾がユイの右手に巻き付いた

「魔術?そんなもの、当たり前……」

 フワフワの尻尾にチラチラと目線を向けつつ返事をすると、ゆっくりとと立ち上がった。少女は座ったまま上目遣いでユイの様子を見ている。その視線を感じつつ、ふぅ。と一つ深呼吸をして、そっと目を閉じたユイ。いつもと同じように呪文を唱える。だが、現れるはずの魔方陣が出ず首をかしげた

「あれ?」

 戸惑いつつ、もう一度深く深呼吸をして呪文を唱えることに集中する。その様子を少女は何も言わず険しい顔でユイを見ている


「えっ、どうして……」

 何度試しても、いつも使えていたはずの魔術が一つも使えず、うろたえるユイの姿を見て、ずっと座って見ていた少女がゆっくりと立ち上がり背伸びをした

「やっぱりな、あの可愛らしい使い魔に騙されたんだよ」

「可愛い使い魔……?」

 少女の言葉にさっきまで一緒にいたミイのことを思い出す。だが、すぐに何度も首を横に降って否定していると、ガサガサと草むらをかき分ける音が二人の側に近づいて来た

「レレイア、なにしてんだ?」

 草むらの中から男性が一人現れ、猫のような耳をつけた少女の方を向き名前を呼んだ

「ああ、ルイス。ちょうど良かったご飯の用意を大至急一人分追加して」

 レレイアが男性にそう言うと、ルイスと呼ばれた男性がユイの方を横目で見た。目線があったユイが少し後退りした。それを見てルイスがはぁ。とため息をつくと来た道を戻っていった

「あの人は……」

 ユイが戸惑いつつ問いかけようとした時、レレイアがユイの右手をぎゅっとつかんでグイグイと引っ張った

「まあ色々と詳しい話しはさ、お腹もすいたし、みんなでご飯を食べてからにしよ!」

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