第4話手のひらにあるもの

「ルイス、あの木の実食べよう!」

「今日はちょっと、あの木の実は止めとこう」

「なんで?美味しいのに!」

 数日後、レレイアとルイスに連れられてログハウス近くにある林の中で食材探しをしているユイ。レレイアが背負う大きな籠に二人に採るように言われた食材を入れながら二人の後を追いかけるように歩いていると、ふと見たことのある果実を見つけレレイアにその果実を差し出した

「レレイア、これ食べる?」

「なんだこれ……」

「何って果物だよ。確か野苺だったかな。甘酸っぱくて美味しいよ」

 取った野苺を手のひらに乗せ、レレイアに野苺を見せると、はじめて見た野苺を見るなりすぐルイスのがいる方に振り向いた

「せっかくだし食べてみたら?」

 ルイスにそう言われて野苺を手に取った。まだ食べるのを戸惑っているとユイが手に持っている野苺を一つ食べた

「レレイアもほら」

 美味しそうに食べるユイを見て、意を決し食べると目を開いてユイの手をぎゅっとつかんだ

「これ、今日のスープに入れよう!」

「ええっ……。それはちょっと……」

 レレイアの言葉にユイが戸惑いながら返事をしていると、レレイアがつかんでいたユイの手を離し、野苺を探しに草むらを掻き分け進んでく。慌てて追いかけるユイの後ろをルイスが困ったように笑いながら二人の後を追いかける




「さてと、沢山食材も採れたし、そろそろ僕は家に戻ってご飯を作るよ。二人は街に出て買い物をお願いしてもいい?」

 ルイスがレレイアが担いでいた大きな籠を背負いながらそう言うとレレイアの尻尾が嬉しそうにユラユラと大きく揺れた

「いいぞ!ユイもいるから沢山買ってくる!」

「頼んだよ。暗くなる前には帰ってくるようにね」

「分かっているよ!」

 ルイスがレレイアにそう言うとすぐユイの腕をつかんで草むらを掻き分け走り去っていった






「人がたくさん……。ねぇレレイア、今日ってお祭りとかあるの?」

 街に出てすぐ、ユイの一歩前を歩くレレイアの尻尾をつかみながら問いかける

「なに言ってんだ、この街は毎日こうだぞ。ルイスみたいな人間や私みたい奴らが来るからな」

 尻尾をつかまれ少し不機嫌になったレレイアがため息混じりに答えると、ユイがガヤガヤと騒がしい街なみをキョロキョロと見渡しはじめた

「へー……。私がいた街には、レレイアみたいな人は居なかったけれど、本当におんなじ世界なのかな……」

 レレイアに先導されるように尻尾をつかみながら街中を歩く。ちらほらとレレイアのような人や空を飛び街を移動する人達を見たり、お店を見たりしていると、魔術書と書かれた看板を見つけ、レレイアの尻尾を軽く引っ張った

「痛い!なんだよ!」

 レレイアが声を荒らげ振り返る。引っ張られた尻尾を振りほどき、ムッとした顔でユイを見た

「ごめんね。ちょっと寄り道したくて……」

 謝りながら魔術書と書かれた看板を指を差す。指差した先を見たレレイアがまたムッとした顔で顔を背けた

「その店は食べ物屋じゃないからやだ。行かない」

「ちょっとだけ、お願い。魔術を取り戻すために少しだけ、ねっ」

 頬を膨らませ嫌がるレレイアに手を合わせてお願いをするユイ。それをレレイアがちらりと横目で見ると、諦めたようにはぁ。と一つため息をついた

「仕方ないな。買い物たくさんするから、ちょっとだけだからな」

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