第3話 約束の嘘

数年ぶりに先輩と偶然に再会できたことがすごく嬉しかった。

俺はその先輩をすごく尊敬していた。

悪さはするが、仲間内のことはすごく大事にしている人で、不思議なオーラがあってとてもカッコよく見えた。

先輩は雅人さんという名前で、みんなに「まさ」と呼ばれていた。

俺はまささんって呼んでいた。

まささんは明日から俺が世話してやるから、昼の10時に消防小屋に来いと若干酔いながら言った。

俺は中学の時にも世話になったのに、社会人になっても世話してくれると言ってくれるまささんを益々尊敬するようになった。

次の日、約束通りに消防小屋に行くとまささんともう一人の先輩の壮亮(そうすけ)さんが居た。

まささんは

「よく来たなー!まずはそこにあるコーヒーでも飲め」

壮亮さんは

「お前も落ちこぼれだなー、俺らと同じだ」

なんて笑いながら言っていた。

俺は大好きな先輩達と一緒に居ることがすごいおもしろかった。

消防小屋では主に競馬をみんなでTVでみながらネット投票で賭けていた。

「よっしゃあー!!」

消防小屋全体に響き渡るくらいの声でまささんが叫んだ。

「30万きたー!」

とどうやら大穴が的中したみたいだった。

「飲み行くぞー、晴哉は女何人か呼んどけー」

と言われ、俺は同級生の女友達とその友達達を呼んだ。

俺とまささん、壮亮さんあとは女友達で10人くらいでいつもたまり場になっている居酒屋に行った。

まささんは18歳の時に結婚して、今は3人の子供が居て俺の5個上だったが年齢問わずモテる人だった。と同時にすごい女たらしだった。

その日も気に入った女と途中で抜けたりしていた。

今思うと良くない環境に居たと思う。

ただその時の俺はこの環境がとても居心地がよく安心感があった。

俺は自然に馴染んでいき、そんな毎日を1年くらい続けた。

俺はその期間にまささんが個人的に引き受けている現場の仕事に手伝いに行きバイト代をもらったりして生活した。

ある日、みんなでまた消防小屋で競馬をしていた時に

「おわったーーーー」

とまささんの叫び声が聞こえた。

全財産ぶっこんで外れた。

とまささんは暴れていた。

「嫁に金渡さないとやべーわ、支払いもあるわー」

とまささんが言っていた。

その帰りだった。

まささんに

「晴哉、代わりにお前の友達から金借りてそれを俺に貸してくれ」

と言われた。

今思えば断れば良かったんだと思う。

ただ、その時の俺はまささんが言うことは全てだった。

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「全てを失う前に」 @torati0923

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