第8話


 正樹とは、僕の苗字と彼奴あいつの名前の読み方が同じだったと言う些細な理由から、友達付き合いが始まった。



「お前、真咲まさきってうのな。俺も同じ正樹まさきって言うんだ」


「へぇ、まさき、何?」



黒部くろべ正樹まさきな。よろしく」


「ああ、名前の方なんだ」



「そゆこと。なんでお前の事は圭吾って名前呼びさせて貰うな。苗字呼びだと自分の事、名前呼びしてる女児みたいで、なんだかむず痒いからよ」


OKオーケー、良いよ。なら僕は、正樹まさきって呼ぶな」



「そこは黒部じゃないのかよw」


「はは、まあ、お互い名前呼びじゃない方が、何だかむず痒いだろ?」



「なんじゃそりゃw。お前って、オモロいのなっ。まあ、これからよろしくな!」


「こちらこそ、よろしく」



 高一の初日に、そんなやり取りをしたのを機に、正樹と何時いつもつるむ様になったと言うのが経緯いきさつである。



「なぁ、圭吾。お前、金谷かなやに告白しないのか?」


「そうだねぇ〜。どう見てもイチャカップルにしか見えないのに、まだ付き合っていないとか言ってる方がおかしいよね?マイブラザー?」


「うるせぇよ。こっちにも色々あんだよ。色々と」



「そんな事、言って何時までも現状維持ってのも、アレだろ?」


「おやおや?もしかして、告白したら断られるとか思っているのかい?ブラザー!誰がどう見たって、彼女金谷君は何時でもブラザーに対してウェルカム状態なのは火を見るより明らかだよ」


「やかましいわ!分かってんだよ、そんな事は」



「なら、ちゃんとした方がいいんじゃねぇ?金谷の事、狙ってる奴とか別クラスに何人かいるぞ?」


「まあ、その辺は問題ないんだ」



「おや?おやおやおやおや?まさかブラザーはNTR寝取られ願望の持ち主なのかい?人の趣味には一々いちいちと口出ししたくはないけれど、それは彼女金谷君が余りにも可哀想と言うものだよ」


「んなわけあるかっ!」



 全く、此方こっちの事情も知らずに勝手言いやがって!


 僕だって、大っぴらに公言出来るものなら、大声で叫びたいよ!


 美弥は僕の彼女だ!って。



 それでも、何処からその情報が両親に届くか分からないんだ。


 慎重に慎重を重ねたくもなる。



 そういう意味では美弥に精神的負担を掛けてしまっているけれど、今は仕方が無いのだと、無理やり思いを胸にしまい込む。



 はぁ〜と深くため息を吐く。



「なんだいなんだい、マイブラザー!仕方ないねぇ~。この俺が橋渡しを…」


「いや、そう言うのいいから」



「本当に大丈夫か?圭吾」


「まあ、色々と手は打つさ」



「おお!それでこそマイブラザー!我がクラスの参謀フィクサーは伊達ではないな」


「フィクサーじゃねえ!」

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