第7話


「だよね〜」


「あははは」


「それな〜」



「お待たせ、真礼まあや美樹みき和紗かずさ


「おー、美弥っち、ちゃんと愛妻弁当、渡せた?」



「ひゅーひゅー、美弥ちゃんも遂にやりおったのぉ〜」


「遂に、美弥も好きな人にお弁当渡すまでに成長したんだね。私は感動してる!後は2人一緒にお弁当を食べる為に、真咲君を誘うのが目標だねっ!」



「え?いや、あれはそう言うんじゃなくて…」



「?」


「?」


「?」



「そ、そんな事より、皆、なんの話ししてたの?」


「あ〜、もうすぐバレンタインじゃん?クラスに配る?的な?」



「美弥は渡すの?真咲君に」


「え?いや?渡さないけど、何で?」



「はぁ〜、まあ、それが美弥ちゃんだよね」


「うんうん、わかってた。わかっていたけど、真咲君は今年も残念賞か、哀れなり」



「?皆こそ、クラスの皆にチョコなんて配ってどうするの?」


「まあ?イベント事だし、良いかな?って」



「ふーん、そうなんだ」


「美弥は、好きな人が出来ても、こういうカップルイベントって、一切やらないよね?真咲君はそこんとこ大丈夫なの?何も言ってこない?」



「え?うん。圭ちゃんは毎年の事だし、気にして無いって、まあ、私達は毎日が記念日だからね!世間様が作ったイベント事なんかに惑わされないのだよ」


「出た!美弥っちの謎理論。その鉄壁最強謎理論で数多くの猛者達の告白を、ことごとく打ち倒してきた強者つわものなり」



「まあ、人それぞれだし、2人共納得して楽しんでるなら別に兎や角いう必要ないんじゃない?」


「まあね。で?真咲君とは、どこまで関係ったの?」



「え?何処どこって?別に何処にも行ってないけど?」


「え?いや、そうじゃなくて…」



「いや、いい、いいんだよ、美弥。みなまで言わせるものじゃない。そうだろ?真礼」


「そうそう、美弥ちゃんは、今のままの美弥ちゃんで十分だよ」



「?はぁ」



 いったい何なのか、私以外がすべて理解したかのような雰囲気を、かもしだしている。


 まったく持って、せぬ。



「そういえば、御堂みどう君が、今度またウチらのグループでカラオケとか行かないって言ってきたんだけど、どうする?」


「え〜、どうしよっか?奢ってくれるなら行っても良いけどねぇ~」



「ははは、それな!」


「いや、もうすぐ中間あるのに、皆そんなに遊んでて大丈夫なの?」



「あ、そうか、勉強会でもする?」


「あ!なら美弥、数学、急にむずくなったから、教えて欲しいかも」



「ああ、なら私、英語教えて!」


「いや、先生せんせーに聞きなよ」



「いやいや、私らは、真咲君と何時いつももワンツーフィニッシュしてる美弥ちゃんセンセーに是非とも、あやかりたいのだよ」


「それで私の成績が落ちたら、どう責任とってくれるのよ!」



 私は、圭ちゃんと恋人で、親友で、ライバルなのだ!


 そんな圭ちゃんに置いていかれる状況を、自らに課すなど、真性のドMでしかない。



 そして、私はドMではないのだ。



「いや、今更でしょ。それは」


「なんだかんだで、これまで一切、成績落としてないじゃん!この天才バカップル共め!」



「私らにも、その頭脳を融通してくれよ〜」


「はいはい、分かったわよ、全くも〜。後、今、誰か、バカって言った?」



「センセー!誰もそんな暴言は吐いておりませんであります!」


「そうそう、気のせい気のせい」


 コクコク



 何故か、美樹がめちゃくちゃ頷いている。


 非常に怪しい。



 だけど、なんだかんだ言って私も真礼達には、甘いのかもしれない。


 幼少時代から人付き合いが苦手だった私に、何時も絡んできた真礼。



 初めは、鬱陶しかったけれど、それでも真礼の多様性に惹かれた。


 そして、真礼達と友達にならなかったら、私は圭ちゃんとの接点すら、ずっと持てなかった。



 だから、持ちつ持たれつは、この世の人情。


 情けは人の為ならず。



 私の…自分自身の為だ。


 そして、その恩恵は直ぐに起きた。



 私は、圭ちゃんと出会った。



 圭ちゃんを知った。


 圭ちゃんと仲良くなれた。



 圭ちゃんと切磋琢磨した。


 圭ちゃんと親友ライバルになった。



 そして…


 圭ちゃんと恋人になった。



 私は、私の最大の幸福を今、手にしている。


 でも、その幸福は今、とても危うい状態にある。



 だから、私は、私の出来る最大級でもって、この幸福を確固たる物とするんだ!


 仲間や手助け要員は、多ければ多い程いけど…でも、人の口にとは立てられない。



 何かの拍子に、親に本当の私達の関係が伝わりでもしたら…。


 終わる。


 何もかもが、終わる。



 そんな予感がヒシヒシとする。


 きっと、圭ちゃんも、同じ事を食事会あの場で悟ったのだろう。



 何処までだろう。


 何処までなら、皆に情報を開示しても影響が無いだろうか?



 嗚呼、私にも圭ちゃん張りの状況対応能力が欲しいよ。


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