第5話


「おはよう、美弥っち」


「おはよう!真礼まあや



「何か元気そうね?」


「そう?」



「うん。何か何時いつもより、ちょっと浮ついてる見たいな?」


「うぇ!そ、そうかな?」



「ん〜?あっれぇ?マジモンで何かあったぁ?」


「いやいや、勘繰かんぐり過ぎだってば!」



「本当にぃ〜?」


「ほんとほんと」



「ん〜?うりうり美弥っち、正直に吐いてしまえ〜」


「もう、真礼まあやぁ〜」




 ガラガラガラ




「ほら、お前達、席につけぇー」


「うぉ、やば先生来ちゃった!美弥っち、後で詳しくね!」




 ずっと横目で美弥達の様子を伺って居たのだが、美弥は本気で隠す気があるのだろうか?


 僕には話を聞いてほしいオーラ全開の振りフリにしか見えなかったのだが?



 何?その押すなよ押すなよ的なやつ?


 本当に頼むよ?美弥。





 あの後、僕たちは二親の元へと戻り、そのまま本来予定されていた食事会へと突入したのだが、食事をしつつ当たり障りのない会話を終えて共に解散となった。


 父さんと若菜さんは結婚式自体は行わず、入籍と記念写真を家族で撮るだけとの事だった。



 そして、若菜さんと美弥は我が家へと引っ越して来る事と相成った訳なのだが、もともと美弥達が住んでいたアパートよりは広めと言うだけの理由で、たいして広くもない3LDKのマンションにぎゅうぎゅうめであり、一応、父さんの書斎兼趣味部屋を多少なりと片付けて美弥の部屋となっている。



 勿論、若菜さんは父さんと同じ部屋に直行して貰ったので、若菜さんの衣類等の私物が父さんの部屋に大量に占拠することになったので、父さんの私物である書籍類がその部屋に行く事はなかった。


 なら何処どこにしわ寄せが来るかと言うならば、言わずもがな僕の部屋である。



 おかげで、ベッドと勉強机以外は本と本棚が圧迫してきており、大地震でも起きたら僕は本と本棚に埋もれて死ぬ未来しか見えない状況だ。


 いっその事、電子書籍とかにしてくれれば場所も取らないだろうに、こだわりなのか何なのか知らないが、ペーパーバックの方が持つのも読むのも良いらしい。



 後、父さんがページをめくる動作が脳を活性化させるとか言っていたが、持論なのか何なのかは知らないが、脳を活性化する前に圧迫空間による脳内ストレスで発狂しないかの方が心配だ。


 閉所恐怖症にでもなったら、どうしてくれる。



 そのうちこっそり古本屋にでも売っぱらってやろうかと虎視眈々と考えつつも、今の僕たちの状況が状況だけに父さんの弱味として上手く使えないかとも考える。


 あくまで保険的な意味ではあるが…。



 美弥には、ああは言ったが、実際問題として僕たちの関係を2年間も家族にバレないようにするのは、はっきり言って不可能に近い。



 実際、この間の食事会の時も、話題として話さざるをえなかった2人共に彼氏彼女が居るばなしをした後でさえ、父さんは微妙な勘繰りを見せていたし、若菜さんだって女性ゆえの女の勘があるだろう。


 そんなのを発揮されたら、一発で一撃終了の合図である。



 美弥と付き合う様になってから、この女の勘があなどれないものである事を、僕は身をもって知っている。



 そんな中で、まさに首のかわ一枚残した状態が、今現在の僕たちの状況であり、その残ったペラッペラのかわ一枚は、僕たちに2人共に彼氏彼女がいるという実質、僕らの証言なのである。


 実際に2人、ともに親に彼氏彼女を紹介した訳でも無く、姿かたちを写真などで見せた訳でも、相手の名前を教えたりした訳でもない。


 その違和感に気づかれても一巻の終わりである。



 なので、いつ、どんな些細な自体で状況がひっくり返るかも分からない状況で、美弥の行動は見ていて、かなりヒヤヒヤさせられる。


 が、まあ、そんな美弥のすきの多い、甘い所も好きになった要因でもあるので、僕的には何もいえない。



 やはり恋愛は好きになった方が負けとは本当なのだろう。


 まあ、そこら辺は僕がきっちりフォローすればいい事だし、そこは美弥に習って楽観的に考えよう。



 まあ、こんめるぎるのは良くない。


 2年間という長距離走を2人揃って駆け抜ける為にも適度な休息や、柔軟な思考は大切なのだ。




起立きり〜つ、礼、おはようございます」


「おはよう、じゃ、ホームルーム初めていくぞ」




 兎に角、バレないように立ち回るのは当然として、バレた時に少しでも問題を縮小化出来うる状況と策を上手くそろえなくては。


 後で情報を整理して美弥と相談だな。



 ……はぁ、それにしても美弥と普通の高校生活を彼氏彼女として一緒に満喫するはずなのに、何でこんなに面倒めんどくさいことになってんだよ!まったく。












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