第3話


「圭吾、ちょっと話があるんだが、いいか?」


「何?父さん、そんなに改まって…はっ!まさか、父さんの会社が倒産したとか!?そんな笑えないダジャレを現実に経験するとかって、僕ってひょっとして、だいぶもってる?てか本気で笑えないけど」



「いや、うちの会社は倒産してないし、その予定もとりあえずないぞ」


「あ、そなの?何か、すげぇ深刻な顔してるから真面目にそうなのかと思ったわ」



「いや、そうじゃなくてな…その、圭吾は母さん欲しいか?」


「は?何?母さん復活するの?復活の呪文、手に入れたの?」



「いや、いつのDQドラ○エだよ!お前、まさか年齢サバ読んでのか?ほんとは、俺より年上なのか?」


「いや、何の話だよ!父さんより年上だったら、どーやって父さんの子として産まれてくんだよ、タイムスリップとか現代の科学知識じゃ不可能だよ!」



「いや、ワンチャンタイムリープなら」


「やかましいわ!……で?何か話あんでしょ?何?」



「ああ、そうだったな。……父さんな、今度結婚しようと思うんだ」


「ん?結婚?て再婚するって事?」



「まあ、ぶっちゃければ、そうと言えるかもしれないが…」


「いや、別にぶっちゃけようが、ぶっちゃけなかろうが、再婚って事だろが!」



「いや、な?別に圭吾の母親、恵子の事を嫌いなった訳でも忘れた訳でもないんだ」


「うん、それで?」



「今、一緒に仕事してる子がな?そのなんと言うか、妙に話が合ってな?意気投合したというか、結構美人さんでな?それなのに、それを歯牙にもかけない、いい女でな?その何故か、父さんに好き好き秋波ビーム的なのを、ここ半年程ずっと送ってきててな?」


「は?何?息子に惚気話?ぜればいいのに」


「いやいや!父さんに舞い降りた、またと無いチャンスかもしれないだろ!」



「大丈夫?騙されてない?美人局つつもたせとかなら警察に相談した方がいいよ?」


「いや!同僚だから!父さんの部下だから!何年も一緒に仕事してるから!」



「はあ、まあ、別に?今すぐ再婚したとしても、一緒に暮らすのって、2年間くらいだろ?別にいいよ?専門大に受かったら、どうせ一人暮らしする予定だったし、今がチャンスなら好きにすれば?」


「おお?良いのか?」



「まあ、別に良いよ」


「そ、そうか………その」



「ん?まだ何かあんの?」


「いや、その彼女、実は子持ちでな?」



「………もしかしなくても地雷案件?」


「いや!うちだって子持ちじゃないか!」



「いや、まあ、それはそうだが……はぁ〜、まあ良いよ、子持ちだろうが、ツバメ持ちだろうが、何でも。好きすれば?」


「おい!圭吾!若菜わかなさんは、隠れて若い男を囲う様な人じゃないぞ!」



「いや、わかったから、悪かったよ、変な例え組み込んで」


「うむ、ならばよし」



「誰だよ…」


「だけど、本当に良いのか?圭吾」



「だから、父さんが幸せになれるってんなら、好きすればって言ってんじゃん」


「そ、そうか!圭吾!ありがとう!早速、明日の夜に食事会をする予定で店も予約している。もちろん来れるよな?圭吾」



「いや、今ものすごく事後報告な件!」



 こうして、次の日である土曜日の夜に父さんの案件に付き合う事になった。



「ちぇっ、美弥を遊びにでも誘って食事会さっさととふけようと思ってたのに、美弥も用事あるって、僕、呪われてんのかな?」



 そんな自虐ネタが、まさか本当に自分に降り掛かるなんて、この時の僕は思いもよらなかったのだった。


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