7
それから1時間もしないうちに、ほたるの居場所は分かった。
『狂犬』の事務所に乗り込み、中にいた幹部に『訊ねた』ところ、あっさりと居場所を吐いたからだ。
「今でも、貴方は伝説なんですね……。」
そう言った拳児は、特に驚いた様子もなくそう言った。
初めから、俺がここに来ればこうなるということを知っていたかのようでもあった。
「目的地まで15分くらいか。良いのか? 本当のことを話すことになるぜ?」
おそらく、ほたるは『狂犬』から拳児の素性を聞かされてしまっているだろう。
そうなると、拳児の願いは成就されないかもしれない。
「……どのみち、打ち明けるつもりでした。上手くいかなければ、『抜ける』つもりでもいます。」
拳児は、もうすでに覚悟できているようだった。
「それならいい。ほら、見えてきたぜ。あの廃ビルだ。」
比較的小綺麗なビルが眼前に見える。
「どうせ男を見せるなら、最後まで貫いて見せろ。」
廃ビルの中には、警備と名乗るゴロツキがところどころに配置されていた。
もはや言葉でやり取りが出来ないであろう彼らを、俺たちは『黙らせて』進んだ。
そして、最上階。
「若、まさかこの女を助けに来たんですかい?」
薄暗い部屋には、『狂犬』とその部下、そして縛られたほたるの姿があった。
「彼女に……何をした?」
拳児の拳が怒りに震える。
その様子を見ながらも、『狂犬』は動じない。
「なぁに……教えて差し上げたんですよ。未来の姐さんに、若の本当の姿を、ね。」
『狂犬』が目配せをすると、部下たちがほたるを縛る縄を解く。
「もう、こっちの世界……極道の者と関わったらな、後戻りできねぇんだよ。自分が望まなくてもな!」
狂犬はそのままほたるを自分のもとへ引き寄せる。
「この世界に足を踏み入れた女がどんな目に遭うのか、教えておいてやるよ。今後のためになぁ!」
「やめてください……!」
自分の身を守ろうと、必死に抵抗するほたる。
「おとなしくしろ!」
そんなほたるの頬を、『狂犬』は殴った。
「お前ぇぇ!」
ほたるを殴られてことで拳児は逆上し、『狂犬』に殴りかかる。
しかし……
「若ぁ、貴方にはもう少しだけ極道の恐ろしさを『お勉強』してもらわねぇとなぁ……。」
拳児の拳が『狂犬』に届くよりも早く、取り巻き達が拳児を押さえ込んだ。
「少しの間、勉強してもらえ!」
取り巻き達は、その言葉を合図に拳児に暴行を始める。
「全く、極道の世界をあまり舐めてもらっちゃ困るなぁ。」
『狂犬』は、いやらしい笑みを浮かべ、殴られる拳児の様子を見ていた。
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