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拳児が思いを寄せる相手は、彼と同じ大学に通う同級生。
拳児も社会的な体裁を保つために通っている大学なのだが、同じ講義を受けるうちに意気投合し、友人となった。
それ以後も親交を深めていき、現在は『友達以上恋人未満』という微妙な関係になっている。
今回、拳児はそんな相手との距離を近づけたいと、俺に『仲介』を依頼してきたのだ。
「大体、真っ当な男は、いちいち仲介屋に大枚はたいて依頼なんかしない。自分の力で考え、どうすれば距離を近づけられるか、どうすれば話が弾むかを考えるものだ。それは、アンタが『一般人として』生きていくなら必要なことだ。権力や金に頼らず、与えられた時間・金・労力で何とかする。それが『一般人』だぜ。」
俺はもっともらしいことを拳児に言う。
依頼を断りたいわけではない。
俺は、目の前の拳児と言う男には、真っ当な男に育って欲しかったのだ。
「分かってます。本当は、そうするつもりでした……。」
しかし拳児は、そんなことは分かっているという様子で、俺に言う。
「親父も後継争いに、『彼女』が利用されるかもしれないんです。このままでは彼女に危害が及ぶかもしれない。俺は、それだけは阻止したいんです。」
そう言うことか。
俺は、納得した。
「そういうことなら、いいだろう。お前の意中の女に『悪い虫』がつかないようにしてやればいいんだな。」
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