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都心が栄え、輝くほど、繁華街の闇は深くなる。
それが、この国の必然だ。
俺が行う仕事は、『仲介』。
喧嘩の仲介、もめごとの仲介、辞職の仲介……。
大きい仕事から小さい仕事まで、『仲介』と言う仕事は尽きることがない。
最近では、『会社を辞めたいのだが、辞表を上司に渡すことも憚られる』などと言う依頼者も多い。
全く、意気地のない成人が増えたものだ。
こういった仕事は、酒の足しにもならない。
それでも断らない理由、それは俗にいう『営業活動』だ。
『大きい仕事から小さい仕事まで』と謳っているのは、この街に住む人が『誰でも』依頼をしてくれるようになるため。
知名度が上がれば食い扶持も増える。
この街では食い扶持を如何に上手く稼ぐかが、生きていくコツなのだ。
大きい仕事の方が多いこの街。
しかしながら、大きな仕事ばかりでは身が持たない。
組織に属していない、俺は一匹狼でこの仲介屋をやっているのだから。
仕事の報酬は、依頼主の言い値で受けている。
しかし、明らかに仕事に見合わない報酬を提示してきた場合、その仕事は受けないことにしている。
相手がその依頼に対してどれほど真剣なのか、本当に仲介して欲しい内容なのか……。
その本気度により、提示する報酬に現実味が出てくる。
本当に成功させたい仕事であれば、そして俺の腕を信じてくれているのであれば、適当な額など提示してこない。
俺は金額が高い、安いなど気にしない。
たとえ安価であったとしても、依頼主にとって支払える額なのか、どれほど苦労して手に入れた金なのか、それが伝われば俺は仕事を受けるようにしている。
以前、1万円で仕事を受けた覚えがある。
それは、簡単な別れ話の仲介だったが、その背景には両親の転勤による転校があった。
相手は夢を追いかけるサッカー部員。
自分のために時間を無駄に割いて欲しくなかったという、依頼主のささやかな優しさだった。
当時中学生だった依頼主。
1万円と言う額は、依頼主には高額だった。
その想いが本気だったと分かったから、俺は仕事をした。
……その仕事がどうなったのか、それはここでは伏せておこう。
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