第12話 わたしの運命の人
「ここら辺でいいだろう。レオノールのオッケーの意味がまったくわからないんだが・・・でなんの話だ?」
心臓のドキドキが止まらない。わたしは今人生初の告白を経験しようとしている。
「わたしはラクマティ様が好きです」
「・・・なるほど。オッケーの意味がわかったよ。しかしオレと君はまだ出会ったばかりでお互いなにもわからないだろう?」
「初めて見た時から心のどこかで惹かれていました。助けてもらった時はっきりわかりました。わたしはあなたに恋をしています」
「・・・待て待て。光のマナと闇のマナは確かに惹かれ合う。だがオレにとっての運命の相手はレオノールだ。君の運命の相手は闇の申し子様だろう?オレは申し子ではない」
「あなたが来る前にいっぱい愛してくれましたよね。あなたと同質のマナを感じました。わたしのことをハイロリと呼んでくれた。不思議と抵抗なく受け入れられた名前です。あなたが闇の申し子様としか考えられません」
「あれはオレのマナじゃない・・・ハイロリ?・・・ro・・・。それが神話の本当の名か!?書から文字が消えていた部分の答えはそれか!?」
「なにを言っているんですか?あなたのマナがわたしをハイロリと言ってくれました。ハイロリはここにおります!ハイロリはあなたが欲しくてたまりません!」
「翼・・・君を愛していたマナが闇の申し子だ。オレはただ巨大なマナの方向へ飛びそこに降りた。そこにたまたま翼がいてオレが助けた。ただそれだけのことだ。それにオレにはそんな複数の人を愛することはできない。わかるだろう?気持ちを伝えるのですら苦手なんだ。君の運命の相手は既に君を見つけている。いずれやってくる。オレと一緒になるよりずっと幸せになれるはずだ」
「あなたが何と言おうともわたしにとっての闇の申し子様はあなたです。今わたしが抱いている気持ちは・・・嘘なんかじゃありません」
「・・・すまない。翼の気持ちに応えてやることはできない。オレはレオノール以外愛せない。今日のことは聞かなかったことにする。必ず翼の運命の相手はいる。オレは確かに闇のマナを感じた。オレなど比べ物にならないくらい巨大なマナだ。光と闇。2つの申し子が揃う日を心待ちにしている。そして翼・・・君の本当の幸せが来る日を願っているよ」
・・・行っちゃった。初めての告白だし・・・なんて言っていいかもわからなかったし・・・わたしにしては上出来だったよね・・・気持ちを伝えるのって難しいのね。あの時は闇の王子様の気持ちはすんごい伝わってきてたのに。
ラクマティ様は闇の王子様じゃないのね・・・でもわたしがあなたを好きという気持ちは本当なの。わたしが光の申し子ならいつかちゃんと自分の素直な気持ちを伝えられるはず。だってあんなに気持ちが伝わる闇の申し子様の運命の相手なんでしょ。ならできるはずよ・・・翼。
運命の相手は闇の王子様。でも今わたしが好きなのは彼。この気持ちは消せないよ・・・なんで涙が止まらないんだろうな・・・止めたくても止めらんないや・・・なんなんだろう・・・。
初めて好きと自分から言えた彼のことを好きでいようと思う。片思いってこんなに辛いんだね。でもわたしはきっと好きで居続けるんだろうなぁ・・・好きになった気持ちは忘れられないよ・・・初めての告白は大失敗だったな。彼が運命の相手じゃなくてもいい・・・運命なんて自分が決めるものよ。
賑やかな宴の音が街に響き渡る。1人涙を流す女の子がいた。静まり返った街の一角には泣き声だけが虚しく聞こえている。
0時を廻り宴が終わりを告げる。王と王妃に結婚の報告を終えた2人の男女が話していた。
「翼のこと断っちゃったの?私はオッケー出したのになぁ?ラクマティさえ良ければ申し子様と結ばれたのにもったいなぁい。仲良くやれそうだったのに残念だなぁ」
「レオノールとこんなにマナで強く結ばれているんだ。それに不器用なオレができると思うのか?」
「知ってるのよ?そう言いながらも翼のこと気になってたでしょ?私より強い光のマナを持ってるしねぇ」
「・・・お見通しか。闇の申し子様のマナがなければ断っていなかったかもな。既に翼には強い闇のマナが入っている・・・闇の申し子様は自分の愛する者に手を出された時には激昂すると言われている。オレなど象が蟻を踏み潰すかのように簡単にやられるだろう。レオノールや国のことを思うとオレには応えてやることはできない」
「ふ〜〜ん・・・要は闇の申し子様にビビった。そうゆうことなのね。でもまぁ・・・死と愛と混沌を司る人間の王相手じゃまぁしょうがないかな。うふふ」
「・・・からかってくれるなよレオノール。闇の申し子様相手でも君のことは命を賭して守る。そういえば翼が妙なことを言っていた。闇のマナにハイロリと呼ばれたと。読み取れぬ神話の名前なのではないかと思っている」
「・・・ro・・・神話。それ以外の文字は強い力で隠蔽されている。ハイロリ神話か。聞き慣れない言葉だけど妙にしっくりくるわね」
ハイロリ神話。光と闇のマナを持つ者が違和感なく受け入れられる隠されていた名。この名前は果たして正しいのであろうか。この答えをこの2人が知ることは決してない。しかし翼は知ることになる。それはまだずっと先の話だ。
明くる朝・・・翼の姿は街のどこにもなかった。街中は慌ただしくなっている。冒険者と騎士団が精鋭部隊を編成している。多くの命が失われマナが飛散し、マナ溜まりと呼ばれる空間が生じるからだ。
マナ溜まりの生きのいいマナを求めて怪物がやってくる。住人達の間ではその怪物を悪魔と呼ぶ。現れる悪魔達との闘いが始まろうとしていた。
光と闇 ハイロリ @rore
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