第9話 戦士達の凱旋

わたしは街まで連れてこられた。朝日が差し込んでいる。城壁には住民達が武器を持ち待機していた。突破された時は皆一丸となり戦うようだ。中には毛の生えた獣のような人もいる。獣人というやつなのかしら。種族の違いはあってもそこにいる者達と同じ表情をしている。


小説だとよく差別されているけれど、この国では差別されていないようだ。人と獣人は談笑している。そういえば予習は間違ってたのよね。わたしが今見ている景色が本当の異世界なんだわ。


門をくぐると駆け寄ってくる女性がいた。


「翼ぁぁ・・・無茶しないでって言ったのにぃぃぃ」


「ちょっと乙女らしくないけどほら生きてるから無事よ。泣かないでって・・・ダメだよ。レティの服が汚れちゃう」


翼の体はレティに抱き締められていた。あったかい・・・そんなの気にしないと言ってくれた。彼女と今度お出掛けしたいなと思う。


「えへへ・・・ただいま」


その後治療されながらわたしはこっ酷く彼女によって叱られた。しかし凄いわねぇ。マナでの回復って医者要らずじゃない。傷口も綺麗に消えていく。立ち上がってみるとわたしはよろけて転びそうになってしまう。どうやら体力までは回復してくれないらしい。レティにまた抱き締められた。こんなに強く抱き締められるなんて、あなたが男だったら好きになっちゃうわよ。レティをお嫁さんにしたいと思った。


わたしはレティに闘いの中であったことを話した。キングと戦闘になったことを話した時には、また恐怖の視線がわたしに降り注ぐ。彼女は怒らせてはいけない。だって怖いんだもん・・・。


そして闇の王子様から愛してると伝えてもらえたこと。言いようがないくらい幸せだったこと。その後すぐにラクマティ様が現れたので恋してしまったことを話した。別人なんじゃないとからかわれた。騎士団長は女性に関しては奥手らしく、愛してると言っている団長が想像できないということだった。


でもラクマティ様が来た方向からマナがわたしに流れてきていたのも事実。わたしの運命の相手なのかはわからない。でもわたしがラクマティ様を好きという気持ちは確かに芽生えてしまった。しばらく彼女と話していると外がざわざわしてきた。


「きっと戦士達の凱旋よ。私達も行かなくちゃ。戦士達の帰りはみんなで迎えることが掟になっているのよ。国民は皆家族。そう教えられているわ」


皆家族っていう考えが持てるなんてすごい。わたしは母の記憶がない。物心ついた時にはいなくなっていた。殺した相手が誰なのかはわからない。いつか見つけたら必ず同じ目に合わせてやるわっ・・・。


わたしも家族の一員にいれてくれたら嬉しいな。わたしにはジジイとの思い出しかないや。父親は犯人探しをしているからね。大勢の家族か・・・なんかいいなぁ。ってレティが呼んでいる。早く行かなきゃ。


外に出るともの凄い人集りができていた。本当に国民全員で出迎えるのね。本当にあったかい国ねここは。おかえりなさいという声があっちからもこっちからも聞こえる。急に静まり返った。なんだろう?


「聞けぃ!此度の闘いは我らの勝利だ!しかし命を失った者も多い!18時より弔いの儀式を行う!皆の者宴の用意だっ!」


そっか・・・やっぱりそれなりに亡くなった仲間もいるのね・・・しかし宴?どうゆうことなのだろう。翼は休んでなさいとレティは言い、足早に宴の準備に加わった。皆家族を失ったというのに和気藹々としている。眼前の光景にわたしは混乱していた。


準備が終わるとレティが戻ってきた。着替えようとわたしの手を引っ張りレティの家に着く。彼女が出してきたのはドレスだった。弔いの儀式なのにドレス??もう理解できなかった。夢でも見ているのかと現実を疑ってしまった。


結局ドレスを言われるがままに身に着け宴へと向かった。


国民全員が煌びやかな服装をしている。見たこともないようなパーティー会場にいる気分だ。騎士団長が3人の者を先導している。セクシーなドレスに身を包む2人の女性。もう1人は腰に布を巻いただけの男性だ。


え・・・なにあのドレス際どい。見ているこっちが恥ずかしくなるわ・・・それにあの男性・・・ただの変質者じゃない。1人だけ裸よ・・・でも無駄にマッチョよねあの人。


ラクマティ様が剣を抜き、天に突き上げ跪いている。3人の方が偉いの?騎士団長より偉いって王様?こんな王様がいるとは信じたくないわね・・・。


3人は壇上に登る。2人の女性が跪いた。目を閉じ俯きながら手を胸の前で組んでいる。男性はどこからともなく燃え盛る炎の大剣を出し天に掲げている。


「トゥルアース国王がここに宣言する!」


・・・変質者は王様だった。異世界の王様は裸の王様らしい。ってことは隣の女性も王族よね・・・。


どうやらわたしがきた異世界では露出癖がないと王族は名乗れないようです。

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