第6話 トゥルアース王国神話
彼女の様子を遥か彼方から覗き見る者がいた。
「戦乙女か・・・ついに現れたか。この時をどんなに僕が恋い焦がれ待ち侘びたことか!あぁ興奮してくるね。ここから大きく動き出していく。となるともう1人は男の子かな?どんな子なんだろうね。ふふ。君に出会えるのが待ち遠しいよ」
その頃2人の女の子は恋愛トークで盛り上がっていた。
「いいなぁ。わたしも彼氏欲しいよぉ」
「そんなにいいもんじゃないよ。翼ならいいじゃない。運命の相手が決まってるんだし」
「え?誰なの!?わたしの王子様は!?」
「凄い可愛い表情してるわよ。うふふ。闇の単一属性を持っている人ね。光と闇はお互い惹かれ合うの。翼のマナと運命的な強さで惹かれ合うマナが宇宙のどこかに存在してるわ。光と闇は2つで1つなのよ。もう出会ってるかもしれないしまだ出会っていないかもしれない。あなたが前に進み続ける限り必ず王子様に出会うわよ。
そうだ。資料室に神話の伝承の本もあるから見てみる?」
レティに言われた通りにわたしは資料室に向かった。目当ての本を探し開いてみる。文字はよくわからなかったが本に込められているマナが直接わたしに内容を教えてくれる。正直難し過ぎてよくわからなかった。
アースという星にある者が誕生する。その者は黄金の国で成長する。決して優れた力を持っているわけではない。どこにでもいる普通の者だ。現実に打ちのめされ数多の苦難を乗り越え成長していく。
ある日突然その者に闇のマナが微笑む。そして闇のマナの申し子となる。力を得た闇は星のために立ち上がり、そこに住む同族へ宣戦布告する。数多の自然の命を喰らう種族。闇はすべての命は平等であるという独自の考えを持ち、生きとし生けるものすべてを差別してはいけないと説く。
闇に共感する者も僅かばかりだが存在した。しかし多くの同族は闇に反発する。そして争いへと発展する。争いの最中、侵略者が襲来しアースはさらなる戦の炎に包まれる。
多くの同族の命を生贄に捧げ、闇は勝利に近づいていく。しかし闇は勝利を目前にし深き闇に呑まれ消えていく。
闇は深き闇を喰らい尽くし、再びアースの地に深淵の従者を引き連れ舞い戻る。
光もまた数多の苦難を乗り越え成長する。光は清らかな乙女のような純粋な者である。戦場においては舞っているかのように美しい。
闇と光は運命に導かれ交わる。成長した闇と光が交わること三度。天上の門は開かれる。闇と光はさらなる世界へと旅立つ。
残った闇の眷属達により、アースは自然豊かな尊き星へと生まれ変わる。永きに渡る平和な世界、千年王国が生まれることになるだろう。
まぁこんな感じなのかな。神話の前兆として赤い妖精が現れたり、ほぼすべての攻撃を無効化する化け物が生まれるとも書いてあった。
わたしが光なのかしら・・・ザックさんやレティが言うように光なのだとしたら・・・どこかにわたしの王子様がいる。ラクマティ様がその王子様の可能性もあるのよね・・・なんだかドキドキしてきちゃったわ。
運命の人を必ず見つけるわ。そしてお嫁さんになる。幸せなんだろうなぁ・・・えへへ。
いつの間にか辺りは暗くなっていた。資料室から彼女は出る。その時、ドアを勢いよく開け駆け込んでくる者がいた。
「急いで取り次ぎを頼む。ゴブリンの大規模な軍団が確認された。妖精の洪水が起きる。おそらく明日の朝6時には街を襲うと思われる。至急部隊を組んでくれ」
妖精?そういえばゴブリンも妖精だったわね。赤い妖精が現れちゃうのかしら・・・時間も元いた世界と変わりないみたいね。わたしはまだここに来たばかりだ。みんなが笑顔で暮らし自然と共に生きている。よくわからないけどどこか懐かしく感じる。この国が好きなんだと思う。
「レティ!わたしにもなにかできる?」
「全冒険者に召集はかかるけど・・・無茶はしないでね翼。出来たばかりの友達は失いたくないわよ」
ーーートゥルアース城ーーー
「ラクマティ様。失礼します。急ぎお伝えしたいことが」
「どうした?ザック。門番の仕事をサボってきたのか?」
「いえ・・・お嬢ちゃんがお金がないと言いましたのでギルドに案内してきたところです。そのお嬢ちゃんが光の戦乙女であることが判明しました」
「てっきり光と闇の複合マナかと思ったが・・・神話の光の申し子か・・・やはりオレは闇の申し子などではなかったな」
「失礼します!妖精の洪水の前兆を確認。王国到達時間は明日朝6時頃。出陣の要請がでております」
「このタイミングでゴブリンキングか・・・至急部隊を編成し出撃するぞ!出撃時刻は0時!各員に伝えよっ!」
「ラクマティ様。オレはギルドに戻ります。あのお嬢ちゃんにも召集がかかっちまう」
「その者の警護は任せたぞザック!」
「命に代えましてお守りすると我が剣に誓います!」
ザックは急いでギルドに戻った。ラクマティは1人部屋に佇んでいる。1人の女性が入ってきた。
「すみません。聞くつもりはなかったのですが・・・光の戦乙女が現れたのですね。私のことはお気になさらずに。マナの導きのままに行動してください」
「レオノール・・・オレが愛しているのは君だ。オレの運命の相手は君だ。マナがそう言っている。闇の申し子は別にいる」
彼は彼女を抱き締めている。
「しかし赤い妖精が出てくるかもしれない。伝承では普通のキングの数十倍の強さだと言われている。この闘いでオレは命を失うことになるかもしれない。ずっと待たせて今更だが・・・。
この闘いが終わったらオレと結婚してくれ。生涯君へ愛を捧げると誓う」
「・・・喜んでお受けいたします。結婚してすぐに未亡人にしないでくださいね?ラクマティ」
彼女は満面の笑みで応える。
「あなたに光の祝福を」
彼の頬に無事を願い祝福を与えた。書に記される赤い妖精は果たして現れるのであろうか。そして夫婦の契りを交わした2人。彼は無事に帰ってこられるのだろうか。
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