第3話 試験開始

「手段は問いません。5分間生き残ってください」


よかった・・・勉強の方じゃないのね。武器はなし・・・か。わたしを取り囲むように部屋の隅になにかが現れる。あれって・・・反射神経を鍛えるためのものよね?


現れた物は固定されたガトリングガン。彼女に対し一斉に弾が放たれる。


遅いわよっ!ジジイに鍛えられたわたしにはこのくらいどうってことないっ!!


彼女は銃弾の隙間を縫うように躱していく。その光景は美しい蝶が舞っているようだった。止まない銃弾。しかし一向に彼女を捉えることはできない。


「レベル1クリア。続いてレベル2に難易度上昇」


・・・まずいっ!わたしは地に足が着いた瞬間急いでその場から飛び立つ。わたしが立っていたであろう場所から爆発が起こる。さらに銃弾が飛んでくる。紙一重で躱していくが掠ってしまった。血が飛び散る。乙女の体を傷つけるなんて最低ねっ!


彼女はそれでも避け続ける。地に降りることをやめた。弾を横から蹴り空中で避けるという超人技を繰り出している。


こんなものジジイの攻撃に比べたらまだまだ優しいわよっ!


「レベル2クリア。続いてレベル3に難易度上昇」


空中にいる彼女に対し様々な武具が飛んでくる。隙間を縫うようにそれは飛来する。


しめたっ!わたしは刀を掴む。これがあればもっと楽になるわっ!


彼女は避けながら刀で飛来する攻撃を打ち払っていく。金属音と銃声だけが鳴り響いている。


「レベル3クリア。防御試験突破。続いて最終試験に入ります。ターゲットを沈黙させてください」


・・・人?だけど生気は感じない。まるで人形のようね・・・なんなのかしら?とにかくこれを沈黙させればいいのね。高速で敵がこちらに向かってくる。


なかなか速いけどまだまだ甘いわっ!相手の剣撃を避けながらカウンターを叩き込む。つっ・・・硬い。


相手の攻撃を去なすのは容易だが相手の防御を突破できない。彼女は幾度となくカウンターを決める。しかし攻撃は通らない。ただスタミナだけが消費されていく。


そういえば昔ジジイが言ってたな・・・。


「翼よ。この宇宙のあらゆる場所にはな。マナと呼ばれるものがあるのじゃ。わかりやすく言うと気のようなものじゃな。それを身に纏えば身体能力は遥かに向上する。武器に纏えば当てるだけで相手を打ち倒すことができる。


儂のように普通の攻撃が通用しない者がいつか現れるであろう。そうゆう者のためにマナの操作を覚えなくてはならん」


マナ・・・それを刀に纏えば倒せるかもしれない。でもわたしこれ苦手なのよねぇ。時間かかっちゃうし使った後は動けなくなってしまう。だけど合格するにはこれしかないようね・・・。


「排除困難。レベルマックスに移行します」


なっ・・・敵がマナを纏ってきた。まずいっ!


彼女は咄嗟に防御する。しかし体は吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。


いったぁぁいっ!もう怒ったんだからね!真っ二つにしてあげるわっ!って・・・時間をくれる気はないのね。


もう痛いからやめてよねっ!うぅ〜〜。まだ王子様にすら見せたことないのに・・・肌をこんなに傷つけちゃってどうしてくれんのよっ!!見られた時嫌われちゃうじゃないのよ!?


とは言うものの・・・あまり持ちそうにないわね。でも合格だけは頂くわよっ!これをやった後は眠っちゃうけど乙女の敵は許せないわっ!あぁもう!!マナのコントロールってホントに苦手!!


闘気全開っ!!


彼女は刀も折られ、さらにボロボロになっている。傷ついた体を無理矢理動かす。血が傷口から吹き出す。体を眩い光のマナが包んでいる。しかしコントロールはまったくできていない。体内のマナが無くなれば昏睡状態になってしまうだろう。


相手の攻撃を片手で受け流す。肉が少し抉り取られるが彼女は気にしない。折れた刀にマナを纏い斬りかかる。


一閃。そう呼ぶに相応しい一撃だった。少し遅れて敵の体は刀筋に沿って2つに引き裂かれていく。だが彼女の体内のマナも尽きかけていた。


「わたしの勝ちね!乙女を怒らせると怖いのよ?覚えておきなさ・・・い・・・」


彼女は自身も沈黙することになりながらもターゲットを沈黙させた。


「攻撃試験突破。異世界適正試験クリアを確認。傷を修復後、直ちに転送します」


彼女は光に包まれる。傷口が瞬く間に塞がっていく。綺麗に消え去ると光とともに体も同様に消えていった。


桐谷翼は試験に合格した。意識がないまま異世界に転送されることとなる。新たな世界で彼女を待っているのはどんな未来なのだろうか。

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