第11話 【変わり果てた姿】
わたろうさんは、独りぽつんと、座っていた。
でも、何かがおかしかった。
ポポさんは、不思議そうにわたろうさんをまじまじと見た。
わたろうさんが、何か力無さそうに、微笑んだ。
頬がこけて、やつれた顔がそこにはあった。
まあ、何と変わり果てた姿になってしまったのだろうと思いながら、ポポさんは、そっとわたろうさんのそばに近づいた。
「どうして、こんなになっちゃったの? 」
深いため息をついて、真剣な眼差しをわたろうさんへ向けた。
「なんてことはないんだ。昨夜からの風でこうなってしまったんだ」
「でもこれはちょっとひどいんじゃない…つらくはないの? 」
ポポさんは優しく、わたろうさんの頬をさすった。
わたろうさんの顔には、以前のようなマシュマロのように柔らかそうな綿毛がほとんど無くなっていて、もう、頬しか残されていなかった。
わずかに、耳のそばに三つの綿毛が残っているだけだった。
わたろうさんは今、息もついているのがやっとの状態で、ゆきやなぎの下に静座している。
春の風が、ポポさんとわたろうさんのそばを、盛んに吹き抜けてゆく。
頭の上のゆきやなぎの房が、ピアノの鍵盤のように、首を交互に振って、揺れている。
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