第7話 【風が吹く瞬間(とき)】


 ポポさんは、何かがちょっと、違う気がした。


 花びらなら、もっとゆっくり落ちてきてもよさそうな気がする。

 あれは、地面で、パッとはじけたような気がした。


 そう思いながら、ポポさんは、何か大事なことを待っている者のように、息を飲んで、次の風が吹く瞬間を待った。



 その瞬間は、すぐにやってきた。


 今度は、ポポさんは、ゆとりを持って、それを眺めることができた。

 わずかな時間の間に、ポポさんの集中力は、かなり高まったみたいだ。


 だって、それが可笑しいくらいに、ゆっくり見えたのだから。



 はじめに風が来た。


 そして、何かが、クモの巣から落下した。


 ポポさんは、それをすかさず目で追っていき、地面に落下する前の空中で、見ることができた。


 ああ、素晴らしい! そう思った瞬間に、それは、地面に落ちて弾けた。


 そうしてその後には、ひとひらの梅の花びらが、地面からふわっと浮かび上がり、少し気まぐれに宙に舞ったかと思ったら、すぐさま、また地に伏(ふ)した。



 ポポさんの胸に、嬉しさがこみ上げてきた。


 だって、偶然出会うことの中には、こんなに喜びがつまっているんだもの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る